娘と2人、上京を決めた理由
離婚調停中から美保さんは実家暮らしをしており、元々ご自身が通っていた大学院の教授のアシスタントの仕事を得て、少しずつ社会復帰していました。
ご両親が娘さんのお世話も手伝ってくれるため生活は安定していたそうです。しかし晴れて離婚が成立すると、もっと違う道を模索したいという気持ちが沸々と湧いたと言います。
「実家での生活は、シングルマザーの私にとってはとてもありがたいものでした。住める場所があり、頼れる家族がいたことは本当にラッキーです。でも、離婚が成立して苦しかった結婚から解放されたとき、『もっと自分の人生を自由に生きたい』と思うようになったんです」
結婚期間中、美保さんは「妻らしく」「母親らしく」と必要以上に制限のある生活を送っていましたが、離婚と同時に、長い間はめられていた足枷のようなものから解放された気分だったそう。
「経済的にも困らない実家暮らしは間違いなく恵まれているし、結婚に失敗したシングルマザーの私が自由を求めるのはちょっと違うのかもしれない。そんな葛藤もたくさんありました。でも娘と2人で新しい世界に行ってみたい気持ちに抗えず、上京を決意したんです。
親は『絶対に苦労する』とやや反対しましたが、説得を続けると最終的には応援してくれました」
なんと美保さんの父親は、「1年間の東京での家賃は援助する。代わりにその間に自立をして、子どもと自分の面倒を見られるくらいに成長しなさい。それ以上の援助が必要なら実家に戻るように」と、温かく娘と孫を送り出してくれたそう。
「父との約束もあるので、上京してからは必死でした。大学のアシスタントの仕事はオンラインで細々と続けられることになりましたが、娘と私の生活を賄える収入には届かないので、まずは仕事を探しながら貯金をやりくりして生活しました」
リスクを覚悟しながらも、自由に生きたいという夢を持ち、東京の暮らしを始めた美保さん。しかし都会の生活は思ったよりもずっと孤独なものでした。そもそも知人友人は1人もおらず、頼れる人もいません。
求人誌やハローワークで仕事も探したものの、幼い子連れのシングルマザーで理想の収入が得られるような仕事は見つからなかったそう。
「上京さえすればどうにかなる! と思っていましたが、早々にシングルマザーの壁にぶち当たってしまったんです。仕事もないし、友達もいない。せっかく都会に来たのに、娘と2人きりで実家にいるよりも孤独を味わうことになりました」
ちなみに美保さんは新卒で大企業に勤め、その後大学院で博士課程修了という高学歴の持ち主。過去に留学経験もあるバイリンガルでもあるため、高収入の仕事に就けるポテンシャルはあり、本人もその自信があったのだと思います。
「地元ならそんな状況を相談したり、誰かに仕事を紹介してもらったり……という手もありますが、いかんせん友達が1人もいない状況。このままじゃ都会に埋もれてしまうだけで良くない。どうにかして状況を変えるべく、まずは友達を作ろうと決めたんです」
そして、誰1人知人がいない都会で美保さんが「友達を作るため」に思いついた方法は、実に驚くべきものでした。
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