まさかの「Tinder」で友達探し
「友達を作るために、マッチングアプリのTinderを使ったんです」
美保さんの意外な発言に、筆者は2度も聞き返してしまいました。
「Tinderは男女の出会いのイメージが強いですが、出会いたい性別を選べるので友達作りにも便利なアプリなんです。私は異性の出会いは求めていなかったので女性のみマッチングする設定にして、ランチやお茶をできる女友達を探しました」
さらに驚くことに、美保さんは実際にアプリで何人か友達を作ることに成功したそう。
「1人も知り合いのいない状態から気の合う友達ができると、だいぶ心に余裕ができました。ただ、やはり娘がいるので時間の制限があります。仲良くなっても夜や週末に誘いには応じられず、なかなか交友を深められなくて……仕事探しと同じように、やはりどうしても子育てがネックになります。当たり前なんですけど。
でもあるときBBQに誘われたので、思い切ってシッターさんに娘を預けて行ってみたんです。この時は本当に楽しかった。久しぶりに育児から離れて自分の時間を満喫できたような。さらに、その場で知り合った方に『英語ができるならプライベートで英語レッスンをしてほしい』と仕事の依頼までいただいたんです」
「シングルマザーだから夕方以降は出歩けない。フルタイムでは働けない。週末は予定を入れにくい、子連れだから近所しか出かけられない……。1人で娘を育てているので、融通が効かないのは仕方がないことです。
でも、これをやり続けると様々なことに制限がかかり、身動きが取りにくくなるのでチャンスを逃す。無理に母親業に忠実になることは、長期的に見ると損をするかもしれない。そう思い、育児はある程度シッターさんに頼ることに決めました」
なかなか伸び悩む状況を打破すべく、ここで美保さんはあるルールを決めたそう。月の収支がマイナスになったとしても、育児を理由に仕事や誘いを断らず、シッターさんを使うことにしたのです。
「もちろん賛美両論はあるだろうし、これは私のケースで、正しいかどうかもわかりませんが……。でも、シングルマザーでコツコツ頑張っていてもなかなか人生が拓けなかったのは事実で、何かを変える必要があると思いました。
それに誤解を恐れずに言うと、子どもは別に預けていいと思うんです。当初は自分の自由時間のために子どもと離れるなんてダメだと考えていましたが、そんなことはない。数時間子どもと離れるくらいは育児放棄にもなりません。
私自身、どこかに自己犠牲を美徳とするような考え方がありましたが、意識して変えるようにしました。子どものために自立したいのに、子どもを言い訳にしてチャンスを逃すのはやめたかったんです」
実際、美保さんが意識して時間を作るようになってから、英会話レッスンの評判が知人間に広まり仕事が一気に増えたそう。そしてさらに、この評判により、なんと正社員の仕事のオファーをもらうことになったのです。
「友人を通して、とあるベンチャー企業から社内通訳として雇いたいと言ってもらったんです。お給料もかなり安定しているし、シングルマザーの私の状況にも理解があり……。得意な語学で人の役に立てるのも嬉しかった」
美保さんのお話を聞いていると、ところどころで勇気を振り絞り、ご自身の殻から抜け出すような様子が伺えます。
世間から正しいとされる常識や暗黙のルールのようなものは、真面目な人ほど必要以上に守り、結果それに縛られ人生が行き詰まってしまうことも多いかと思います。しかし時に、自分自身の価値観と判断で思い切った決断が人生を変える鍵になるのでしょう。
そして美保さんが無事自立を果たしたタイミングで、現在の夫と出会うことになったのです。
来週公開の記事では、子連れでの年下の男性と交際をスタート、結婚をされた経緯をじっくり伺っていきます。
写真/Shutterstock
取材・文・構成/山本理沙
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