世界中にいる全てのお涼たちへ。
私は電車に乗り、扉の前あたりに立って車窓から景色を見て、「いい天気やなあ」とのほほんとしていたら、いきなり後頭部をばちこーん! と叩かれ、「あ、死んだ」と思った。やっぱり死とはこんなに突然、思いがけなくやってくるのだなと実感し、これまでの人生の走馬灯が見えるのを待っていたのだけれど、しばらく待っても走馬灯は流れず、「あれ? チャンネル間違えたかな? 入力切り替えしてなかったかしらん? 私としたことが。最後までおっちょこちょいなんだからあははん」と舌を不二屋のペコちゃんのように出しながらじっと待ってみても走馬灯は流れず、どうやら視界にはさきほどの、のほほんな車窓からの景色が映っているようで、「あれ、もしかして死んでない? 生きてる?」と体を動かしてみれば、もぞもぞと動くことができ、「そういえば」と思って振り返ると、そこには大学生ぐらいの青年が真っ青な顔をして立っていて、「あれ? 幽霊? ということはやっぱり私死んでる?」と思い、じっと見つめてみればその青年は蒼白な顔で「す、すみません! 間違えました!」と言って私に頭を下げた。
経験豊富なドッペルゲンガー先輩である私は「あ、もしかして人違い?」と聞けば、「はい! 友達にめっちゃ似てたんです! どうもすみませんでした!」と平謝り。おそらくその青年は私を仲のいい友人だと思って、驚かせようとし、私の後頭部をいきなりぱしこーんと叩いたのであった。
いや、サプライズは別にええねんけどさ、ちゃんと確認しようよ。私後ろ姿やったしさ、せめて前側も確認してから実行しようよ。わかるよ、私がきみの友人に似すぎているということは。だって実の母親も間違うねんから、そら仕方ないよ。でも、いきなり頭叩くぐらいの親密な仲なんやろ? 見間違わないであげようよ。ていうかいくら親密でも後頭部は叩かないであげようよ。結構な力やったよ。渾身やったやんか。だってこの車両に響き渡ったもん、「スパァーーンッ!!」て。私結構本気で死んだかと思ったよ。うん、気をつけようね。たぶんこれからも私に似ている人はたくさんいると思うねん。結構な確率でまた同じトラップに引っかかって誤スパァーーンッ!! をしてしまう可能性がきみにはあるねん。だから肝に銘じておいて。この風貌は量産型やってことを。私はそこらじゅうにいるということを。きみのまわりにはあふれんばかりの私がいるということをどうかどうか忘れないでね。よろしくお願いしたいよ。ばいちゃ。
そんな内容を言えるわけはなく、「あ、いえいえ、大丈夫ですよ」と言いながら、同じ車両にいるのは気まずいであろうから、私はとなりの車両に移り、まだばくばくしている心臓の鼓動を落ち着かせ、心の心肺蘇生をした。
ということで、あなたもどうかお気をつけください。
お涼はあなたのすぐそばに、すぐそこに、あなたのとなりにおるのです。
お涼はこの世界にちりばめられていて、「お涼」と「普遍」は同義なのです。
どうかそのことを決してお忘れなきように。
あなたのお近くにいるお涼に「あ、死んだ」と思わせないように、やさしくしてあげてほしいことこの上なしだよ。
追伸
世界中にいる全てのお涼たちへ。
いまこそちゃぶ台の上へ立ち上がるときが来た。
今日もここから世界を変革していくために、おどるのだ!
<INFORMATION>
坂口涼太郎さん出演
映画「アンダーニンジャ」
2025年1月24日(金)公開予定
忍者は世界中に忍び、現代いまでも暗躍している。その数、約20万人――。
誰も観たことが無い“現代忍者エンターテインメント” が幕を開ける!!
太平洋戦争終結後、日本へ進駐したGHQが最初に命じたのは「忍者」組織の解体だった。それにより全ての忍者は消滅したかに見えたが、彼らは世界中のあらゆる機関に潜伏し、現代でも暗躍していた。その数は約20万人と言われている。忍者組織「NIN」に所属する末端忍者・雲隠九郎(下忍)。暇を持て余していた彼はある日、ある重大な “忍務” を言い渡される。それは戦後70年以上に渡り地下に潜り続けている、ある組織の動きを調べること。その名は――「アンダーニンジャ」。忍術、知略、そして最新テクノロジー。すべてを駆使した、かつてない戦いが今、始まる――‼
原作:花沢健吾「アンダーニンジャ」(講談社「ヤングマガジン」連載)
脚本・監督:福田雄一
プロデューサー:若松央樹、大澤恵、松橋真三、鈴木大造
文・スタイリング/坂口涼太郎
撮影/田上浩一
ヘア&メイク/齊藤琴絵
協力/ヒオカ
構成/坂口彩
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