米倉涼子さんが、過去に観た映画を紹介するアーカイブ コレクション。
そのときに観た映画から、米倉さんの生き方、価値観が垣間見えます。

Overture Films / Photofest / ゼータイメージ

ひとりの男性が病院の窓から落下して、命を落とすシーンで幕を開ける『モールス』。ショッキングで不穏なオープニングからいきなり心をつかまれて、この先一体どんなことが起こるのか、ドキドキしながら画面を見つめることになりました。

雪に包まれた町で描かれるのは、いじめられっ子の少年と秘密を抱えた少女の物語。冒頭の雰囲気からミステリー・サスペンスなのかと思っていたら、次第にホラーのような展開になっていったからびっくり! とはいえ、残酷な描写もあるけれど、決してそれだけの映画ではありません。ふたりが少しずつ心を寄り添わせていく過程 を見ながら、私もすべての運命を超えていくほど愛せる人が欲しい な、という気持ちになりましたね。

映像の質感や色合いもとても美しかったし、子役ふたりの演技にも初々しいだけではなく、ある種の重たさがありました。実はホラーは苦手なジャンルだから、鑑賞したのは久しぶり。気持ちの悪いシーンもあるのに切なくてかわいい、こんな風に共感できるホラー映画なら大歓迎です。

 

『モールス』
いじめられっ子の孤独な少年が仲良くなったのは、隣に引っ越してきた謎めいた少女。同じ頃、町では連続猟奇殺人が起こって……。スウェーデン映画『ぼくのエリ 200歳の少女』をハリウッドでリメイク。

取材・文/細谷美香
このページは、女性誌「FRaU」(2011年)に掲載された
「エンタメPR会社 オフィス・ヨネクラ」を加筆、修正したものです。