熊倉正子さんによる短期集中レッスン、最終回はフランス女性に学ぶ歳をとるほど素敵になる秘密を紐解きます。

熊倉正子(くまくら・まさこ) 1959年生まれ。1987年に日本初のラグジュアリーブランド専門PR会社「KIC」を立ち上げ、「ドリス ヴァン ノッテン」「マルニ」「クリスチャン ルブタン」など数多くのブランドを日本に紹介。2000年、世界的なカリスマスタイリストで、仏「VOGUE」誌編集長だったカリーヌ・ロワトフェルドに請われ、同誌のディレクターに就任し、パリに居を移す。その後グッチグループに移籍し、「ブシュロン」では世界各国での創立150周年イベント、「アレキサンダー マックイーン」社在籍時には、英国キャサリン妃のウェディングドレス制作と契約業務を一任される。2013年よりカリフォルニア在住、2017年アイウエアブランド「mEeyye」設立。世界初のファッションプログレスリーディンググラスのコレクションを発表し、MATCHESFASHION.COMにて発売中。


顔だけ綺麗にする日本人、首から下を磨くフランス人


 日本では、顔は入念にお手入れをしているのに、首から下がなんだかお粗末、というケースが実に多いように思います。

お顔はばっちりメイクしていていかにも時間をかけました、という風情なのに、ちょっと緩んだ体でサイズの合わない服を着て、手入れのされていない靴を履き、おまけに姿勢が悪い、という女性をよくみかけます。
 
残念ながらそうすると歳をとればとるほど「みすぼらしさ」が際立ってしまうのです。

 その対極なのがフランス女性。顔は薄化粧だけれど、首から下を徹底的にメンテナンス、そして立ち姿が美しい女性が圧倒的に多いです。特にパリなどの都市部では太っている女性を見かけることはあまりない。

 私の友人にも年に一度はスイスのクリニックでデトックスステイをするという人が数人いるし、一般の女性でも食事の節制や、体を鍛えることには熱心で、50代以上でも「脱ぐとすごいんです」という人が多い(笑)

 ヨーロッパ女性にとって、体は資本であり、美しさの基本なのです。

 そういった価値観から見ると、お金をかけて顔だけシワのない若い肌を維持していて、体がおばあちゃん、というのは奇妙で、とてもアンバランスに感じる、というのはおわかりいただけると思う。

 それに体積の大きい体のメンテナンスにお金と時間をかけたほうが、全体的な印象もぐっと若々しく見える。頬にできたシミひとつ消すのに高級化粧品やレーザー治療で何万円もかけるなら、そのお金を数ヶ月トレーナーについて体を鍛えるために使用したほうが、ずっと効果的だと思うのです。人の印象というのは、一部分だけでなく、全体から醸し出されるものだと思うから。

 贅肉に包まれた緩んだ身体では、服はあか抜けて見えないし、ただ細いだけでは素敵な服も貧相に見えてしまう。だから、私も体を引き締めるためにジョギングをしたり、インナーマッスルを鍛えしなやかな体を手に入れるためにピラティスやヨガをしたりと日々運動することで、体型維持を心がけています。

 おかげで十数年ぶりにあった人からは「なんだか前より若々しくなった」とか「印象が変わったわね」とか言われることも多いのです。

 体がきれいになるとシンプルな服もそれだけでシックで素敵に見えたりと、その効能はとても大きい。厳しいことをいうようですが、日本ではそこまで気を使っている50代はまだまだ少ないのが事実。だからこそ、そこまで気の行き届いている女性は際立って美しく見えるのです。

 

<新刊紹介>
『無駄のないクローゼットの作り方 -暮らしも生き方も軽やかに-』
熊倉正子・著 講談社 1300円(税別)

「お金も時間もかけているのに、日本人女性はファッションで損をしていてもったいない!」と欧米ファッション界が一目置く”伝説のマサコ”が、本当におしゃれになるためのワードローブの作り方、装い方を、理論的かつ具体的に指南します。
「おしゃれになりたいなら黒のパンツはやめる」「ワードローブは1本のラックにかかる量だけで十分」「いつも同じような服なのを怖がらない」など、独自の美意識と合理的なロジックに基づく、これまでにない大人のためのレッスンです。
そして実践すると、クローゼットが整い、毎日の服に迷いがなくなるだけでなく、暮らし方、生き方もどんどん軽やかに、シンプルになっていくのがマサコ流哲学の真骨頂です。
これまでの服が似合わなくなってきた、何を着たらいいのかわからない、と”服難民”に陥りがちな大人の女性、必読です。

 
第1回「黒のパンツをやめればあなたはもっと素敵になれる!【熊倉正子さんのおしゃれレッスン①】」はこちら>>
第2回「手持ちの服を棚卸しすればもう服に悩まない!【熊倉正子さんのおしゃれレッスン②】」はこちら>>

構成/河野仁見(講談社)