先行きの分からない世の中だからこそ
自尊心を育てることが必要
私は子どもに将来、いわゆるエリートになってほしいから、いい学校に入るためにいい点数を取らせて……と、毎回の成績に一喜一憂するようなことは避けたいんです。もちろん具体的な目標を持つのは素晴らしいことですが、そういうディテールよりも、どういった人間性を育んでほしいかということをイメージして子育てするようにしていますね。娘には、先に言ったように自主性をはじめ、向上心や自尊心を持つ大人になってほしい。
時代というのは常に変わるもので、これからの世の中もどうなるか先行きは分からない。けれど、そうした生きる姿勢や力さえ身につけていれば、どんな時代になっても踏ん張りがきくはずだから」
そんなお嬢さんも今や中学3年生。思春期真っ只中の子どもに向き合うのは、正直なところ難しいこともあるのでは?
「もちろん難しいと思うことはありますよ。さっきまで甘えていたのに、急に機嫌が悪くなるとかね。でも振り返ってみれば、自分だって同じ年の頃、親にあたったり偉そうにものを言ったりしていましたから、それくらい当然だなと受け流しています。子どもだって、学校に塾にと外で頑張っていてストレスが溜まっているでしょう。それを家の中で親に見せているくらい可愛いもの。
それに、3歳までの“愛情貯金”があれば、基本的な信頼関係は崩れないと思っていますから」
自分のダメな部分だけでなく
頑張っているところも認めて
とはいえ、母親の方でも何かといっぱいいっぱいになっている人は多い。
「確かに、表面張力のようにぎりぎりの気持ちで生きている人も少なくないと思います。私にもそういう時期があったので気持ちはよく分かります。
私も30代の頃、モデルとしてはもう新人ではないという立場にありながら、何をどう頑張っても報われないという気持ちにいつも苛まれていたんです。さらに、初めてづくしの子育てや毎日の生活に追われて必死になっていて。自信をなくす一方でしたね。
でも、大変だった30代を乗り越えた今になって思うのは、若い頃にはなかった強さやブレない核のようなものを身につけることができたということ。おかげで次に何か困難なことがやってきても、楽勝で乗り越えられるような気がします。だから、人生の中で向き合わざるを得ない苦労や葛藤は、早いうちにうんと味わった方がいい。その際に、自分のダメな部分ばかりでなく、頑張っているところも認めること。根本的に自分を認める気持ち、つまり自尊心は大人にだって必要です。自分に優しくなれないと他人にも優しくなれないでしょう?」
仕事に子育てにと、ひとつひとつの事柄に真摯に向き合ってきた富岡さん。だからこそ、実りある40代を迎えることができたのだろう。
「昔読んだ本に書いてあって、ずっと心に持ち続けてきた言葉があるんです。20代は美しく、30代は強く、40代は賢く、50代は豊かにーー。
いま40代半ばを過ぎて、ようやく『40代は賢く』の意味がイメージできるようになってきたところ。20~30代で、目一杯キャパシティを広げてきた中から、40代では何かを極めていく作業が必要なのかと考えています。
『50代は豊かに』だからこそ、豊かさを求めるのはまだもう少し先かなと。豊かになることを急がず、焦らないで目の前にあるものを極めることに集中して取り組んでいきたいですね」
年齢を経るにつれて、さらに軽やかに、そして魅力的に輝き続ける富岡さんの姿を、これからもずっと追い続けたい。
■プロフィール
富岡佳子/モデル
大阪府生まれ。短大時代にモデルとしてデビュー。2009年9月号から雑誌『STORY』に登場し、2010年5月号からカバーモデルに。年齢を重ねるごとに輝きを増す存在感と、内側から溢れ出すような美しさに憧れる同世代のファンが多数。
著書に『シンプルなファッションを「素敵! 」に見せる私の発見60』/光文社 (2014/11/12)、『かわいいオトナの創りかた 30代から輝く方法』/メディアファクトリー(2012/3/2)など。
>>インスタグラム @yoshikotomioka
>>オフィシャルブログ
>>富岡佳子さんが思う「40代のファッションルール」はこちら
撮影/伊藤 翔 ヘア&メイク/神戸春美 取材・文/河野真理子 構成/川良咲子(編集部)
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