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完璧主義ではなく快楽主義を目指す

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シンプルライフとは、モノを減らすことが目的ではなく、快適に暮らすためにモノを減らすということです。ここが昨今のミニマリズムとは違うところ。だから私はお客さんが来るとき、そんなに部屋を片付けないんです。マイホームのように心地よく滞在してもらうために。それに少しくらい散らかしたところで、モノが少ないので5分で片付けられると分かっていますから。

ピカピカに片付いていてスッキリした部屋は、綺麗かもしれませんが、どこか落ち着かないものです。私にとって一番大切なことは“居心地がいい”ですから、ホコリの存在も認めてあげるのです。

そもそも、モノを減らすのは何のためか、考えてみてください。私の場合は、目的は怠けることなのです(笑)。余計な作業に取られる時間を減らして、ソファでのんびり美味しいコーヒーを飲みたいから。罪悪感を持たずにボーッとしたいから。ボーッとするのは、私にとってクリエイションの時間なんですよ。

でも本来の目的を忘れて、もともとは過程であったはずの“モノを減らす”ということが目的にすり替わってしまっている人も多いもの。そうして、「まだ余計なものがある」「片付けなきゃ」と追われてしまっている。これは完璧主義者ですね。でも私は決して完璧主義ではない、むしろ快楽主義者なのです。


ドミニック・ローホー
著述家。フランス生まれ。ソルボンヌ大学で修士号を取得し、イギリス、アメリカ、日本の大学で教鞭を取る。様々な国に移り住む中で、モノを持たず豊かに暮らす「シンプルライフ」を確立。それを本にまとめた『シンプルに生きる』(講談社+α文庫)がベストセラーに。他に『シンプルリスト』『99の持ちもので、シンプルに心かるく生きる』(ともに講談社)など著書多数。また禅寺や墨絵を通して日本の精神文化に理解が深いことでも知られる。


〜次回は「良いものは高いものとは限らない」 6月1日公開予定です〜

 

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取材・文/山本奈緒子 構成・写真/大森葉子(編集部)