10年以上が経ってもなお、<br />感動も愛着も深まるばかり・・・ byスタイリスト 田中雅美_img0
高度な職人技とエレガンスの完璧な調和は、何年経っても惚れ惚れします。本当にどんなスタイルにも馴染むので、コーディネートに迷うこともほとんどありません。

スタイリストになろうと意識し始めた二十歳くらいの頃、「tankist(タンキスト)」の存在を知り、憧れを抱きました。「タンキスト」とは、言わずと知れた名品時計、カルティエの「タンク」ウォッチを愛する人たちへの敬意ある呼称。アンディ・ウォーホルやジャクリーン・ケネディ・オナシスなど、世界に名だたる多くの著名人が名を連ねています。なかでも私が心を掴まれたのが、イヴ・サンローラン。サンローランと同じ時計が着けたくて、いつか本物の時計を買うなら絶対にカルティエのタンクにしようと心に決めました。
購入のタイミングが訪れたのは、それから数年後の23〜24歳の頃。スタイリストとして独立し、ひとつの目標としていた雑誌からオファーをいただき始めた頃だったと思います。カルティエのなかでもスペシャルラインとして位置づけられていた「コレクション・プリヴェ・カルティエ・パリ(略してCPCP)」で、創業者の名前を冠した「タンク ルイ カルティエ」と出会ってしまったのです・・・! もちろん、20代前半の私にとって、その購入は、まさに“清水の舞台から飛び降りる”以外の何ものでもない大事件。にもかかわらず、それほど迷うことがなかったのは、“遅かれ早かれ購入する”という確信があったから。むしろ“これからもっと頑張ろう!”といい意味でのプレッシャーになってくれました。

あれから早10年以上が経ちますが、今もこの時計には驚くほど飽きることがありません。研ぎ澄まされた端正なデザインはどんなスタイルにもマッチして、すべてのデザインや流行を超越した稀有な存在だと痛感するばかりです。実は、先日まで修理に出していたのですが、スイスまで送られていたよう。戻ってくるまでに数ヶ月間が掛かりましたが、まるで新品のようにピカピカに。時計職人の情熱と緻密な仕事ぶりが想像され、あらためて感動してしまいました。

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現在は販売終了している「CPCP」は、最上級の機械式ムーブメントを搭載した特別なコレクション。専用ケース以外に、ルーペとクロス、携帯用ポーチが入ったボックス付きです。


CREDIT:
シャツ/ドリス ヴァン ノッテン
デニム/リーバイス517 デッドストック
バッグ・スカーフ/エルメス
ゴールドブレスレット/マクリ
コードブレスレット/ マリー エレーヌ ドゥ タイヤック
※一部チャームはメダイユ
 

アイコン画像

PROFILE 田中 雅美さん

1978年生まれ。スタイリストとしてエディトリアルを中心に、広告やカタログ、女優、タレントまで、手がけるスタイリングワークは多岐に渡る。ハンサムな中にフェミニンさの垣間見えるスタイルを得意とし、特にエッジなトレンドと愛される名品の絶妙なミックスを日々のスタイリングテーマに掲げる。

 

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「タンク ルイ カルティエ」
タンクコレクションの原点

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カルティエウォッチのアイコンとして、不変的なエレガンスを放つタンクコレクション。飴色のストラップで、よりやわらかい雰囲気に。時計「タンク ルイ カルティエ」(18KYG×アリゲーターストラップ)¥895000(税抜)/カルティエ(カルティエ カスタマー サービスセンター)
Jean Luc Drigout © Cartier

1917年に、戦車のキャタピラから着想を得て生み出されたタンクコレクション。ケースの一部がストラップのアタッチメントを兼ねた斬新なデザインは、その洗練されたスタイルで当時センセーションを巻き起こしたそうです。そればかりか、シャープなレクタンギュラーケースと丸みを帯びたアタッチメント部分とのコントラストは、後に流行するアールデコ様式の先駆け的存在だったとも。なかでもこの「タンク ルイ カルティエ」は、3代目ルイ・カルティエが自らの名前を冠して愛用したモデル。今では様々な派生モデルが誕生しているタンクコレクションですが、まさに“原点”と呼ぶにふさわしいミニマムでクラシカルなデザインが魅力です。

構成・文/村上治子