2017.7.5
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自分だけの価値基準で選ぶことの
かっこよさをパリで学びました by 福田麻琴


人気スタイリストのおしゃれのルーツを教えてもらうインタビュー連載が本日からスタート。第1回目は、フランス留学されていた経験もあり、洗練されたカジュアルに定評がある福田麻琴さんの登場です。

人気ファッション誌「バイラ」などの
スタイリストとして大活躍する最中に突然の留学

カジュアルだけど女っぽさのあるフレンチシックなコーディネート。その秘訣は、きれいめな小物使いとシックな色合わせに。

スタイリストになったのは、本当にたまたまで。セレクトショップのスタッフをしていたときに、知り合いから紹介される形でスタイリストアシスタントになったのがきっかけなんです。師匠はファッションのスタイリストですが、アートや映画、音楽にも造詣が深く、いろいろなことを学ばせて頂きました。自宅で仕事をされる方だったので、庭の手入れや食事作りも姉弟子や妹弟子と分担していました。その中で私が特に任されていたのが、庭! 鍬を持ちながら、何でこんなことしているんだろう・・・と思いながらも、花や器のセレクトを褒められると嬉しくて。当時はよくわかってなかったんですが、アシスタント時代に身につけたお花やアレンジや器選びのセンスは、今のスタイリストの仕事にとても役立っていると思います。

その後、独立して、いろいろなファッション誌でお仕事させていただいて4~5年経った30歳のときに、フランスに留学したんです。“スタイリストが留学”というとかっこよく聞こえますが、留学を決めた理由は失恋(笑)。「人生って何が起こるかわからないな」と思い、仕事が忙しくて諦めていた留学を決意しました。そんな理由だから、絶対にパリに行きたいと思っていたわけではなくて、“留学”がまず先にあって、当時ワーキングホリデーで行くことができたのが、フランスとオーストラリアとニュージーランド。留学後にも仕事を続けたかったので、それならパリだろうと。すぐに申請書類を出して、通ったところで、編集部など仕事先に報告。仕事はとても順調だったので、驚かれましたし、反対もされました。でも、“一度きりの人生だから自分のしたいことをしよう”という気持ちのほうが強かったんです。

毛玉がついたニットでも堂々と写真に撮られる。
そんな姿に価値基準の本質を見た気がしました

留学期間は1年でしたが、本当に濃くて充実した時間でした。最初の2カ月は語学学校、その後は現地のコーディネーターさん(撮影などの手配やアテンドをしてくれる方)のお手伝いをしていました。行ける限り旅もしました。ドイツ、ベルギー、ロンドン、プラハ、ポルトガル、モロッコなど10か国くらい行ったかな。雑誌のWEBページでパリ留学日記を書かせてもらっていたんですが、担当の方に「旅先ばかりで、全然パリ留学日記じゃないじゃない!」って言われたほど。忙しくてなかなかできなかった留学を実現させたことで、私はこれから何でもできるし、今までとはまったく別の仕事だってできるんだって思いました。でも、パリで撮影のお手伝いをするたびに、撮影が楽しくて、私はスタイリストという仕事が好きなんだと実感させられました。

滞在中は道行くおしゃれな人をスナップしていていたんですが、そのことも今のスタイリングに大きく影響している気がします。習いたてのたどたどしいフランス語で話しかけていたんですが、意外とみなさんOKしてくれて。さらには「ここは背景が悪いから、あっちで撮りましょ!」なんて場所まで探してくれる(笑)。みんなしっかりポーズをとって、かっこよく写真に撮られるんです。自信に満ち溢れていました。よくよく見ると毛玉のついたニットを着ていたり、ジャケットが破れている人もいる。でも、大好きなおばあちゃんから譲り受けたものだから、とか自分だけの価値基準でモノを選んでいる人が多かったんです。大切だと自分が思えば着続けるし、どんなにいいものでも、まだ自分にふさわしくないと思えば身につけない。他人とか流行どうこうじゃなく、自分なりの基準を持っているのは素敵だし、強いなあと感じました。

「自分の価値基準を持っているという意味でも憧れるし、スタリングの参考にしているのはジェーン・バーキン。『WOMEN’S WARDROBE』は、私のスタイリングの教科書。色使いや撮影するときの服の並べ方など、随分前のものですが、古びず、今も刺激を受けています」
「アニエスベーのブランド設立40周年の記念のポスター。あまりに素敵だったので、額装して飾っています。高校生のときに買ったアニエスベーのボーダーカットソーとまったく同じものを、今も着ています。流行は移りゆくものとよく言いますが、変わらないものもあるんだとアニエスを着るたびに感じます」


制限があればあるほど、
スタイリングするのが楽しくなる

高校生のときはアニエスベーに憧れてボーターカットソーを渋谷まで買いに行ったし、愛読していた雑誌は『オリーブ』で、もともとフレンチテイストは好きでした。でも、スタイリストとして仕事を始めたときには、作るスタイリングも自分自身の服装も、そんなことはなくて。プライベートは、スカートにヒール、髪も巻いてました。かなり異性の視線を意識した感じで(笑)。仕事ではトレンドには何でも挑戦。そういう時期はスタイリストとして必要でしたが、留学したことで、自分が何を好きなのか、どんなスタイリングがしたいのかをゆっくりと考えることができて、ひとつの軸を作ることができたと思っています。

「服を買うときはコストパフォーマンスをしっかり見極めます。このカットソーに2万円はいいけれど、このパンツに1.5万円はないな、とか。素材、コーディネート力などを総合して、判断しています。それはスーパーでにんじんを買うときと同じです(笑)」

いちばん根底にあるのは、私はデニムとかボーダーとかチノとか、普通の服が好きだということ。普通の服をどう組み合わせ、どんな色合わせにすることでおしゃれになるのかを考えるのが好きなんです。あと、ただただ“素敵に可愛く”ではなく、制約がある中でスタイリングするのが楽しい。だって実際の生活も必ずTPOを考えなくちゃいけないでしょ? それは子供を持ったことでより強くなりました。今は子供が小さいから、ヒールはたまにしか履けないし、服も家で洗濯できることが重要。お仕事でも「フレンチっぽいスタイリングで」というオーダーをいただくことが多いので、そういう制約の中で、どうやって今っぽく自分らしいフレンチに落とし込もうかと考えるとワクワクするんですよね。

「留学時代にパリコレ会場で見かけたフランスの女優さんが、ネイビーのコートに、このエルメスのバッグを斜め掛けしていた姿があまりに素敵で。ずっと探していて、最近やっと見つけました。こういうときに備えて『いつか出会うかもしれない貯金』をしているんですが、全部使っちゃいました(笑)」


今はファッションが中心ですが、インテリアなどライフスタイルの分野にも興味があって。ファッションからライフスタイルまで総合してスタイリングできるようになれたらなと思っています。
 

CRECDIT:
トップス/サンスペル
スカート/スティーブン アラン
帽子/キジマタカユキ
バッグ/エルメス
パンプス/マロノブラニク

 


次週は田中雅美さんが登場! 公開は7月12日(水)です。お楽しみに!

撮影/目黒智子 ヘア&メイク/コンイルミ(ROI) 構成・文/幸山梨奈