ミモレ世代の人気スタイリストに 満を持してロングインタビュー おしゃれ心の磨き方十人十色

2017.7.12
2

アイデアの引き出しをどれだけ持てるかが
スタイリングの要です by 田中雅美

第2回目は、雑誌『madame FIGARO japon』や広告、カタログ、女優やタレントのスタイリングまで、多岐に渡って活躍する田中雅美さん。そのハンサムなスタイリングや佇まいがどこかミステリアスな田中さんの素顔と、スタイリングのアイデアの源に迫ります。

スーパーモデルの
リンダ・エヴァンジェリスタに憧れた小学生時代

ご自身もモデルのようにすらりとされている田中雅美さん。「コンプレックスだらけ」と言いながらも、「くるんとなった襟足だけが唯一のチャームポイントなんです」と教えてくれるチャーミングな方。

今は基本的にモノトーンを中心にベーシックカラーがほとんどですが、幼い頃は買い物に行くと「ピンクが来たよ!」と言われるくらいにピンクを着ていたらしいんです。あの頃に一生分のピンクを着ちゃったんでしょうね。今はほとんど着ません。小学生の頃にちょうどスーパーモデルブームがあって、私も夢中になっていました。いちばん好きだったのはリンダ・エヴァンジェリスタ。駅前のデパートの屋上でスーパーモデルフェアのような催しがあって、スーパーモデルのブロマイドやメモ帳を買ってもらったのを覚えています。漠然ときれいだなあと思い、ただただ眺めるだけで、自分でモデルになりたいと思っていたわけでないんですが、今にして考えれば、ファッションの仕事に興味を持つきっかけだったのかもしれません。

スタイリストという仕事を知ったのは中学生の頃。当時、『CUTiE』、『Zipper』、『Seventeen』、『non・no』などの雑誌を愛読していて、スタッフクレジットにあるスタイリストという言葉を見つけたんです。高校生のときには、お洋服も大好きで、「スタイリストになろう」と思っていました。アルバイトして貯めたお金を、すべてコムデキャルソンを買うのに使って親に怒られたこともありましたね(笑)。ちょうどその頃、テレビで高田賢三さんやコシノジュンコさんの人生を描いたドラマが放映されていたんです。そのドラマで文化服装学院を知り、「ここに入るかも」と思っていました。実際に文化服装学院に入学したんですが、入ったのはスタイリスト科ではなく服飾科。というのも、洋服はどうやって作られるのか、服作りの基礎を学びたかったから。実際に勉強していく中で、スタイリストではなくパタンナーになろうかと思い始めたことも。

いろいろなアパレルブランドに就職活動もしましたが、どこもダメで。そんなときに友人に紹介されて、広告を中心に活躍されているスタイリストさんのもとでアシスタントをすることになったんです。そこで2年半、その後、当時、雑誌をメインに仕事をされていた井阪恵氏に2年半、約5年アシスタントをして独立しました。広告と雑誌では、同じスタイリストの仕事でもやり方が違うのでふたりの師匠に教えてもらえたことはとてもありがたかったですね。


仕事相手にも喜ばれて、
最大限に自分らしい仕事ができることが喜び

仕事の範囲は、雑誌、広告、女優さんやタレントさんのスタイリング、と様々ですが、どのジャンルであれ、依頼されたら、最大限、要望に応えながら、私にスタイリングをお願いしてくれたことを、意味のある仕事にしようと思っています。お仕事は自分の作品ではないので、いろいろな制約の中で、どれだけ自分がいいと思えて、最終的にまわりも喜んでくれるものにできるか。そのためにネゴシエーションしたり、新たな提案をしたり、柔軟に動くようにしています。そのときに重要なのがアイデアの引き出しがどれだけあるか。

たとえば、先日のミモレでの撮影で「誰かミューズをイメージして撮影をしたい」というリクエストがあったんです。まだモデルさんも決まりきってなかったのですが、もし石川亜沙美さんで撮影することができたら、ステラ・テナントみたいにしたいなって、頭の中の引き出しを開けながら思いついたんです。考えているときは、あれでもない、これでもない。どうしよう! って焦りながら頭をフル回転。でも、具体的なイメージがあるとスタッフで共有もしやすいし、思い描いた絵にもしやすいんです。

「今日は撮影される側なので、いつもよりアクセサリーが多めです(照)」と田中さん。時計や手元のこだわりは「私の人生と時計のはなし」で詳しく語られています。

いつどんなテーマが与えられるかわからないので、時間を見つけては、書店に行ったり、美術展に行ったり。最近だとディズニー・アート展、草間彌生展、デヴィッド・ボウイ展、ダリ展を見に行きました。人気があるもの、話題になっているものには足を運ぶようにしています。あとは宝塚の舞台や歌舞伎も観に行きますね。仕事の現場は基本的にはアウトプットの場ではあるんですが、素晴らしいクリエイターの方々とご一緒するととても刺激を受けるし、自分のインプットにもなっていると感じます。

最近だと、写真家のアラーキー(荒木 経惟)さんとの撮影がとても刺激的でしたね。ご本人の佇まいや立ち振る舞い、撮影のライティングまで、すべてが衝撃的で。それから、とても幸運なことに20代前半にM・A・Cのメークアップアーティストのゴードン・エスピネさんとご一緒することがありました。メイクも素晴らしかったんですが、場の空気の作り方がとても上手で。資生堂のお仕事で出会ったアーティスティック・ディレクターのディック・ページさんからは、アイデアの引き出しの開け方を勉強させてもらいました。どんな大御所の方も、イメージソースがあって、それを自分らしくアレンジしていくんだという発見がありました。

田中さんのスタイリングのイメージソースとなっている写真集。小学生の頃に憧れたリンダ・エヴァンジェリスタなどが収められた『10 WOMENS BY PETER LINDBERG』は「私の根底にある理想の女性像がこの1冊に詰まっています」。『VOGUE』フランス版の2007年9月号は、何度も何度も見返している1冊。「いち読者になって、掲載されているアイテムはかなり買いました(笑)」


夏の定番はドン・キホーテで買っている
Tシャツとモードなブランドのパンツ

自分の毎日のコーディネートはいたってシンプル。まずボトムから選びます。基本的にパンツで、ワイドだったり、雨の日だったらクロップドにしたり。ブランドはセリーヌとドリス ヴァン ノッテンが多いかな。トップスは、春と秋はジョン スメドレーのコットン素材のニット、冬はウール素材のニット、どちらもメンズのVネックが基本。そこにサルヴァトーレ ピッコロ、シャルベやバルバなどのシャツも登場します。夏は今日も着ているんですが、ドン・キホーテで買っているギルダンのTシャツ。いろいろ着てみたんですが、厚みとか袖の張り具合がちょうどいいんです。90%は白で、今日は撮影だったので特別に黒のギルダン(笑)。全身ブランドで固め過ぎてしまうと、おしゃれになり過ぎちゃうから(笑)。

最近宝塚の舞台にはまっているという田中さん。舞台を見ることも、スタイリングの仕事をする際のインスピレーションになっているそう。

CRECDIT:
Tシャツ/ギルダン
パンツ/セリーヌ
ネックレス/セリーヌ
バッグ/エルメス
サンダル/セリーヌ


次週は室井由美子さんが登場! 公開は7月19日(水)です。お楽しみに!

撮影/目黒智子 ヘア&メイク/北原菓 構成・文/幸山梨奈