“ヌケサク雅子”を伝えたかった
 

その肌の美しさで美容の撮影も多かった雅子さん。モデルとしてはクールビューティなイメージが強かった。撮影:高橋ヒデキ

白澤 でも映画を観ていて、雅子さんに怒られないのかな?と思ったときもあったよ。

大岡 え、どういうこと?

白澤 私は雅子さんのことを知っているから、クールビューティーなだけじゃない、すごく温かくてお茶目な人だというのを知っていたけど、それをどこまで出していいのかと……。

大岡 “ヌケサク雅子”をどこまで出していいかってこと?(笑)

白澤 そう(笑)。

大岡 実は彼女が亡くなってしばらく経ったある晩、疲れて帰って来たところにピンポンが鳴ったの。何だろうと思ったら、バカでかい段ボール箱いっぱいに詰められた花が届いて。しかも水がこぼれて底は抜けそうだし、熱烈な思いを綴った手紙も添えられているし、僕は「これ、どうすればいいんだろう……」と途方に暮れちゃったんだよね。そんなふうに、彼女に「崇拝」に近い気持ちを抱いていた人は少なからずいて。

白澤 存在がちょっと人間離れしていたもんね。

大岡 彼女自身は、そう思われることに折り合いをつけていたと思うんだけど、そうはいっても怒るときもあれば、失敗をするときもいっぱいある。逆にそんな人が何でここまで美しかったんだろう、という映画にできたらいいなという思いも生まれて。だから“ヌケサク雅子”は絶対に入れてやる!と思ったわけです。

白澤 そのお花のおかげだったんだ(笑)。でも本当に、実際の雅子さんはむしろクールな部分が全然ないような人だったよね。

大岡 貴子ちゃん夫婦を見て、いつもクスクス笑ってたよ。「貴子ちゃんの旦那さんは、貴子ちゃんがかわいくてしょうがないんだね」って、パンパン僕の肩を叩きながら笑ってた。

 

「アナタは私のことを養っていくのよ」と言われ
 

 

大岡 雅子さんはもともと、モデルとしてどう見られたいということより、「自分はこう生きていきたい」というのが優先事項としてあった人だと思うんだよね。だから僕のことも、「自分が生きたいと思う人生をこの人なら支えてくれるだろう」と思って選んでくれたんじゃないかな。

白澤 自分がどうなりたいという軸が明確にあるから、相手を変えようというタイプの男性は無理だ、ということは分かっていたのかもしれないね。

大岡 あるとき僕が「自分の身一つで働いて戦って頑張っている人を見ると最高だなと思う」と言ったら、「何言ってんのよ、アナタはサラリーマンで最高じゃない。だってアナタはこれから私のことを養うんだから」って言われて、ウワー!と感動したね。そう言われると引いちゃう男もいるかもしれないけど、そのとき僕は「頑張って会社員をやってこんな素敵な人に巡り会えた。男として胸を張っていいんじゃないか」と思ったんだよね。

白澤 そういう風に素直にお互いが思えるところも二人はバランスが取れていて、本当にナチュラルな結婚だったと思う。

大岡 ただし雅子さんのような生き方を踏襲するのは大変だと思うけど。毎日いろんなことを自分に課さなきゃいけないわけだから。帰ってきた後とお風呂の後は、毎日30分くらい、ずっと肌のお手入れをペチペチやっていて。

白澤 プロだね〜。

大岡 多分雅子さんがモデルとして一番大事にしていたのは、肌だと思う。肌の白さと質。そこを保てている自信があったから、歳を取ったり、多少自分の趣向が変わっていったりしても、全然揺らがなかったんだと思う。

白澤 プロ意識からうまれる自信だよね。

大岡 彼女は非常に頑張り屋で人間臭くて、こちらもそれなりに頑張り屋で人間臭くて。そこは歩調を揃えて歩いていけたなあ、という気はしていますよ。
 

第二回は8月14日公開予定です。

<映画紹介>
『モデル 雅子 を追う旅』

 

 

2015年に、希少がんで亡くなったモデルの雅子さん。夫である大岡大介さんは、「夫婦として共に生きながら、モデルとしての雅子をほとんど知らないままだった」と気づき、モデル・雅子の姿を映画にして伝えていこうと決意する。雅子さんを知る人たちのインタビュー、雑誌やCM、映画など雅子さんの出演作などを素に構成されたこの映画からは、プロフェッショナルを貫き続けた彼女の強さと美しさが浮かび上がっている。より美しく、より健やかに生きようと志す全ての女性に観てもらいたい一作。アップリンク吉祥寺、ほかにて全国順次公開中。映画公式HP http://www.masakomonange.com/

配給: フリーストーン
出演:雅子/インタビュー出演(登場順):安珠、田村翔子、藤井かほり、髙嶋政宏、中田秀夫、石井たまよ、竹中直人他
監督・プロデューサー:大岡大介
©︎2019 Masako, mon ange.

撮影/片岡 祥
取材・文/山本奈緒子
取材協力/AVOSETA

前回記事「告白。私太りました。そして元に戻しつつあります!」はこちら>>

大岡大介さんのインタビュー「【モデル・雅子のがん闘病生活と夫婦愛】病の宣告、そして最期のとき」はこちら>>

 
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