ミモレではこれまで数量限定の特装ボックスでの販売や春と冬の受注会を開催するなど、読者の方にはすでにお馴染みのジュエリーブランド、ボン マジック。ミモレストアでは今後、受注生産という形で、人気のピアスやネックレスが継続的に購入できるようになりました。今回は、ミモレストアのバイイングディレクターでもあるスタイリスト福田麻琴さんがボン マジックの浜田山のサロンを訪ねました。

美しい調度品に囲まれた心地よい空間

浜田山のサロンにて。

ボン マジックのバロックパールは、自然が生み出す凹凸を含め、パールそれぞれの個性を大切にし、スペシャルな一品でありながら、毎日でもつけたい普遍性を併せ持っています。自然の美を日常で身につける喜びを感じられるボン マジックのジュエリー。そのルーツについて、 創業者・白井多恵子さんの長男であり、現ボン マジック ディレクターの白井成実さんにお話を伺いました。

ジュエリー作りのルールに縛られない、自由な発想が出発点

ボン マジック ディレクターの白井成実さんとスタイリスト福田麻琴さん。

1982年、渋谷の公園通り近くにショップをオープンしたボン マジック。創業当初はオリジナルの洋服とアクセサリーを扱うショップだったそう。

白井成実さん(以降白井):母(創業者・白井多恵子さん)は元々ファッションデザイナーとして働いていたのですが、私が生まれるタイミングで勤めていたアパレル企業を退社し、しばらく主婦をしていました。でも自分で何かやりたいという気持ちがあるすごくパワフルな人で。私が3歳くらいの時に、ボン マジックをスタートしました。

福田麻琴さん(以降福田):最初はジュエリーじゃなくて、洋服からスタートされたんですね!

白井:洋服も作りながら、パリから仕入れたスカーフを置いたり、セレクトショップのような形でやっていたようです。アクセサリーも少しずつ作り始めたのですが、そこでガラスや樹脂を使ったコスチュームジュエリーがすごく人気になって。その後アクセサリーが中心のブランドになっていきました。

福田:ジュエリー作りをはじめられたきっかけは何だったのですか?

白井:母が30代後半~40代前半の頃は、ジュエリーの流れとして、すごく華奢なものやダイヤを埋め込んだようなゴージャスなものが多かった時代なんですね。だけれども母自身年齢を重ねてきて、自分の気持ちやスタイルを映し出してくれるようなジュエリーが、なかなか見つからないと感じて「だったら自分で作ってみよう」と思ったみたいです。

福田:私も30代後半から、洋服よりもジュエリーに興味が移ってきたタイミングがあったのですごく共感します! 30〜40代になると、洋服は自分の好きなスタイルが確立してくるのですが、一方でそれだけだと寂しさもあって。冒険したい気持ちを楽しめるのがジュエリーなんだと思います。

白井:母もそうだったかもしれませんね。身に着けるだけで気分が楽しくなるようなジュエリーを作ろう、と自然と取り入れ始めたのが、珊瑚や翡翠、南洋バロックパール等でした。「美味しそう」と感じる色の石を合わせたり、今までのジュエリー作りのルールに縛られず、自身がストーリーを感じるものを選んでいた気がします。

ボン マジック創始者・白井多恵子さん。多くの人を魅了した白井さんのおしゃれと生き方の軌跡をたどった冊子『Bon Magique Book』より。

福田:南洋のバロックパールって、当時は珍しかったのではないですか?

白井:そうですね、当時パールといえば真円のイメージが強くて、いびつな形のパールに躊躇する方もいらっしゃいました。でも、パールも天然の素材だから、すべて同じ形じゃなくてもいいんじゃないか、という想いがあったようで。個体差があり、ひとつとして同じものはないのがバロックパールの魅力。様々なパールの中から、その人にぴったりのものを見つけてもらうスタイルがボン マジックらしさだと思います。もし最初からジュエリーを専門にしていたら、バロックパールを扱っていなかったかもしれないですね。“パール=真円”といった先入観なく、ジュエリー作りを始めたのが良かったのかもしれません。

ひとつとして同じ形のない、個性豊かなバロックパールやケシパール。自然の形そのままの天然石が、ピアスやネックレスとして作られていきます。

福田:私は最初に手にしたジュエリーがパールだったので、パールにはすごく思い入れがあるんです。若いころは冠婚葬祭にしか使っていなかったけれど、今はジュエリーのなかでもパールが一番好きかもしれません。最近大きなバロックパールのピアスを着けている人をみて、すごく可愛いなと思っていたんです。バロックパールのいびつさ、完璧ではないところに、むしろ私は惹かれます。ちょっと遊びが欲しい、シンプルな服にひとクセ欲しい、と感じるときにバロックパールの個性がちょうどいいんですね。Tシャツやシャツに合わせて普段使いしていて、もはや体の一部のように感じるくらいです。

福田さんがひとめ惚れして購入した、ボン マジックの13ミリ白蝶バロックパールのピアス。

福田:13ミリと聞くとちょっと大きいのかなと思ったのですが、実際つけてみると決して大きすぎる印象ではないですね。年齢を重ねたからこその存在感というか、自分がパールに負けない気がして(笑)。どんな洋服にも合わせやすいし、徐々に肌になじんで愛着が湧いてくると思います。ジュエリーで遊べるのは大人世代ならではの楽しみ方ですよね。

白井:天然のパールは自然由来のものだから、身に着けていてリラックスできると思います。ひとつひとつ大切に仕上げていますので、お客様にとってのオンリーワンになれば嬉しいです。

福田:実はミモレストアでも販売している黒蝶パールの一連ネックレスも気になっているんです……! バロックパールが黒蝶のフォーマル感をいい意味で日常に引き寄せてくれる気がして。まさに10年、20年後も使っている姿が目に浮かびます。ぜひ次の節目のタイミングでお招きしたいなと思っています(笑)。

成実さんは、どこでジュエリーデザインを勉強されたのですか?

白井:プロダクトデザインやインテリアが好きで大学では建築を専攻しておりました。小さい頃から自宅でジュエリー制作している母がいる環境があり、趣味で作ったシルバーのリングが友達に喜んでもらえたのが嬉しく感じ、きちんとジュエリーデザインを学んでみたいと思いファッションやアートが盛んなロンドンに留学しました。

福田:手先が器用だったのですね。今はどんな風にものづくりをされているのですか?

白井:基本はすべて1点物です。自然や街、アートなどいろいろな分野からインスピレーションを受け、シーズンに捉われずに作り続けています。天然石からアイデアをもらうことも多いですし、自然をモチーフとしてデザインすることもあります。試作中のブローチがあるのですが、植物が芽吹くようにパールの蕾が実るイメージで制作しているコレクションを準備しています。カタログは年に1回、9月に制作しています。

バロックパールのみならず、珊瑚や翡翠などの天然石を使ったジュエリーが店内に飾られています。

福田:すべての自然のなかに美しさを見出されているのですね。美しさのセンスをしっかり引き継がれていらっしゃる。成実さんの記憶の中のお母さまは、普段どんなアクセサリーをされていたか、覚えていますか?


白井:珊瑚をよく着けていましたね。珊瑚の赤はオリエンタルな肌に良く合う素材。珊瑚のネックレスは軽くて着けやすいので意外と日常に取り入れやすいですし、奥行きのある赤は顔まわりを明るくしてくれます。シンプルなTシャツにさらっと着けていたのを覚えています。

福田:自分を表現するものとして、自分が身につけたいジュエリーを作るって素敵です。珊瑚ってチャレンジしたことないけれど、今日アトリエで拝見してすごく感銘を受けました。パールはいまの私に寄り添ってくれるジュエリー。自分らしさのエッセンスを加えてくれる欠かせない存在だとしたら、珊瑚はこの先の目標。いつか私もTシャツに珊瑚をさらりとつけられるような、揺るぎない、そして軽やかな歳の重ね方をしていけたらな、と思いました。​


白井多恵子さん、そして成実さんのたおやかな美のエッセンスに満ちた浜田山のサロン。ぜひ一度訪れたい空間です*。



*現在は予約制となっております。詳しくはボン マジックHPにてご確認ください。

撮影/haku
文/出原杏子
構成/朏亜希子(編集部)