NHKでは、「BBC50:50」という取り組みが行われています。イギリスの公共放送・BBCが2017年に始めた取り組みで、番組の出演者の男女の割合を測定・可視化し、偏りがあれば制作現場の担当者が次のコンテンツ制作に活かします。多様な社会を公正に反映したコンテンツ作りを目指すもので、現在世界30か国、50を超える組織が参加(2023年12月時点)。NHKは日本の放送局で唯一参加しており、連続テレビ小説『虎に翼』、大河ドラマ『光る君へ』、『おはよう日本』など現在13の番組が参加し、女性の割合が少しずつ増えているといいます。この取り組みをすることで現場にどんな変化が生まれたのか、BBC50:50に参加する朝の生活情報番組『あさイチ』のチーフ・プロデューサーである望月篤史さんにお話を伺いました。(聞き手:ヒオカ)

 

NHKにおける「50:50 The Equality Project」参加番組※2024年4月時点
「あさイチ」「ハートネットTV」「大河ドラマ(『光る君へ』)」「連続テレビ小説(『虎に翼』)」「夜ドラ(『VRおじさんの初恋』)」「ドキュメント20min」「おはよう日本」「ニュースウオッチ9」「サタデーウオッチ9」「クローズアップ現代」「日曜討論」「ほっとニュース北海道」「ETV特集」
 
 


視聴者の方が先を行っている


ーーBBC50:50に参加しているNHKの番組では、計測してみると男女比が偏っていることに気が付いたり、初めから終わりまで男性しか登場しない回があったことがわかったりということがあったそうですが、『あさイチ』ではどうでしたか?

望月:『あさイチ』に関しては、女性をターゲットにしているので、他のテレビ番組よりは、取り上げる方たちも女性が多く、カウント上ではそんなに偏りはありません。
ただ、例えば、「女の子のランドセルは赤い」といった、自分たちに潜在的にすり込まれ、当たり前になってしまっているバイアスに気づくようになりました。あるとき、家族の構成を説明するイラストを作ったのですが、小学生の女の子が赤いランドセルを背負って、ピンクのスカートをはいていました。

イラスト:Shutterstock

『あさイチ』の特徴として、生放送なので、リアルタイムでメールやFAXを受け付けて、番組中も常にSNSでどんな反応があるのかをチェックし、紹介するというものがあります。SNSで、「『あさイチ』って、女性の立場からいろんなことを伝えてくれているけど、やっぱりランドセルは赤なんだ」といったつぶやきがあったそうです。制作班の中でも共有されて、当たり前としていて、見過ごしてしまっているようなバイアスがないか、考えさせられました。
日々番組を作る中で、ご指摘を受けたことで、気づく場面があったりします。そういった出来事を通して、視聴者の皆さんたちの考えの方がずっと先を行っているんじゃないかと感じるようになりました。指摘やご意見があれば、間に合えば番組中に紹介するし、後でチームの中で、こういうご意見があったんだよねと話をするようにしています。

NHK提供