こんにちは、編集・川端です。

今週は、心浮き立つファッション系のエッセイか、マンガをご紹介しようと思っていたのですが、今どうしても誉田哲也さんの最新刊『硝子の太陽R-ルージュ』について書いておきたく。またハードボイルドなミステリーで恐縮です(汗)。

最近、たて続けに、屈強な男性に若い女性が傷つけられる痛ましい事件がありましたね。被害にあった若い女性たちの恐怖を想像するだけで胸が苦しくなります。

『硝子の太陽R-ルージュ』¥1500(誉田哲也・光文社)は5月11日に発売になったばかりの姫川シリーズの最新刊です。

姫川班は、祖師谷で起こった地下アイドルをしている女性とその一家が惨殺される事件を捜査するうち、30年以上前の一家殺人事件との類似性をみつけます。過去の事件が迷宮入りとなった原因には、元米軍が関与していた可能性がチラついて……。

偶然とは思えないタイミング。いやがおうにも、東京・小金井のライブハウスの事件と沖縄の事件を思い起こさずにはいられません。

誉田哲也さんの今回の小説は、エンターテイメントに包みながらも、「日米地位協定」や「沖縄基地問題」などは、かなりの調査に裏打ちされた事実に基づいて書いていると思われます。恥ずかしながら自分にほとんど知識がなかったことに気付かされたりもしました。

誉田哲也さんの作品は、前回ご紹介した『ケモノの城』などもそうですが、実際に起こった事件や社会問題などを、単なるモチーフとして起用するだけに終わらず、事件が起こる社会的な背景や、人間の悪意、憎しみなどを浮き彫りにします。

私は今、悪を断罪したり、社会に問題提起したりするメディアにいるわけではないけれど、こういった事件には持って行き場のない憤りや無力感を覚えます。女性が幸せに安心して暮らせる社会でいられるようにと願うばかりです。

なんだか深刻な話になってしまいましたが、小説自体は至極のエンターテインメントです。
姫川班が犯人と直接対峙するラスト数十ページは、文字通り息をするのも忘れるほど!

姫川玲子もシリーズを重ねるうちに、大人になってきていて、部下の男性たちのやりとりの成長ぶりも見どころです。ラストによると姫川シリーズはまたあのメンバーが加わって続く模様。楽しみ!
「バタやん、読むのが速いよね」と社内の人に言われたのですが、あまり速読タイプではないかと思いますが、併読派です。先週はこの4冊がパラレルでした。

原田マハさんと湊かなえさんの新刊も終盤へ! またご紹介しますね☆