被害者全体のうち45.1%が「自校の児童・生徒」
全国各地で相次ぐ教師による生徒への性犯罪。文部科学省の「公立学校教職員の人事行政状況調査」によれば、令和4年度に性犯罪・性暴力等で処分された公立学校教員は242人にのぼり、このうち、児童生徒、18歳未満の子どもへの性暴力で処分を受けたのは119人でした。また、被害者全体のうち45.1%が「自校の児童・生徒」でした。
教師という圧倒的に優位な立場を利用した生徒への性犯罪。この問題を題材にした漫画作品『言えないことをしたのは誰?』(上下巻、さいきまこ著、現代書館)を紹介します。
『言えないことをしたのは誰?』(上巻/下巻、さいきまこ著、現代書館)
舞台はとある中学校。物語は養護教諭である神尾のもとに、「学校に時限爆弾が仕掛けられている」と電話が来るところから始まります。神尾が真相を探っていくうちに、電話の主は過去に教師から性暴力を受けていたことがわかります。その女性の証言で、彼女に性暴力を行なった教師が現在神尾の学校に勤務していることが発覚します。
そこから、生徒への性暴力を行っている教師を探し出す闘いが始まります。
ターゲットになっていた生徒は、授業や部活を休みがちで、たびたび保健室にやってきていました。しかし、他の教師はその背景を確かめようとはせず、心が弱い、ズル休みだと決めつけていました。
被害を疑った神尾が、担任教師を説得し、生徒の自宅を訪問しますが、生徒は硬直し、口を閉ざしてしまいます。家庭訪問の結果の報告を受けた教頭も、「本人から被害の訴えがないならできることはない」とまともに取り合おうとしません。神尾は、加害者の教師を特定し、周囲に被害を訴えますが、「証拠がないのに同僚を陥れている」と厳しい目を向けられ、孤立してしまいます。
この『言えないことをしたのは誰?』で描かれるのは、被害を受けた生徒が被害を自覚し、訴え出ることがいかに難しいかということです。
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