モカ色のシャツにハイウエストのブルーデニム、肌になじむシルバーアクセサリーをさらりとつけて…。とてもシンプルな装いで現れた「マディソンブルー」のデザイナー 中山まりこさん。飾らずとも、そこはかとなく素敵な空気をまとっている。それは、なぜ?
今でこそ、おしゃれのお手本とも言える自分のスタイルをお持ちの中山さんですが、実は、何を着たらいいのか分からない、似合う服がない、そんな「おしゃれ更年期」を経験してきた女性のひとり。私たちと同じように悩み苦しんできたのだと言います。そのような時期を乗り越えた中山さんが語る「40代の今、すべきこと」。そこには、迷える私たちの指針となるヒントがたくさん詰まっていました。
中山まりこ/マディソンブルーデザイナー。1980年代よりスタイリストとして活動。1980年代後半、ニューヨーク在住時にアメリカの雑誌『Interview Magazine』等でスタイリスト活動・ 雑誌のコーディネーターの他、NOKKO全米デビューのディレクターとして活躍。1993年KiKi inc.所属。広告・雑誌・音楽のスタイリングをメインに活動。2014年、自身のブランド『MADISONBLUE』を立ち上げた。
前触れもなく訪れた「おしゃれ更年期」。
苦しみ、出した答えがマディソンブルーの原点
ミモレで掲載した「おしゃれ更年期」の記事が大反響だったことをお話しすると、「分かる!」と大きく頷いた中山さん。かつて、おしゃれがしっくりこなくて、外に出るのも楽しくなくなってしまった時期があったのだと言います。
「40歳ちょっとの頃、今まで着ていたものがすべて似合わなくなって…。30代は、ニットはカシミヤを着ればいいんだとか、Vネックはこれくらいの角度がいいんだって、そういうことでやり過ごすことができたのに、それも何かが違う。色もそう。黒が大好きだったのに、急に着ることができなくなってしまって。黒から離れて、シルバーグレーやネイビーなど、少し明るめの色に初めてトライしました。髪も30代みたいに染めているのも違和感を感じ始めて、真っ黒にしてみたり…(苦笑)。あと、流行りのものだけを着るのが嫌になってしまったのもこの時期です。なんだか居心地が悪くて…」
トレンドの服を身につけてその気になれるのは30代まで。40代は、自分の定番があって、そこにトレンドものを添えるくらいの感覚でないと“自分らしさ”を表現できないと感じ始めたのだそう。
「20代から30代にかけて、デニムの切りっぱなしのスカートを愛用していて、それにジャケットを着ると自分らしくいられたんです。でも、40代になるとそれが通用しなくなりました。子どもが中学受験で学校を周るのに、何を着ていいのか分からなくて(笑)。会う人や行く場所など環境が変わって、思い返すと、42〜44歳ころがいちばん迷っていて、コンサバな時代でしたね。何を着てもしっくりこなくて、仕事には出て行くけれど、友人との集まりには気が向かない、みたいなことが続きました。そこで、ふと原点回帰してみたんです。若いころから好きだったTシャツにジャケットのスタイル。Tシャツは年齢を重ねるとまた厚さや形など似合うものが変わってくるから、ニットに置き換えてみたりして。あとはシャツですね。そういうものにトレンドのボトムスを合わせてみたら、自分の身の置き所があると感じたんです」
それが紛れもなく、「マディソンブルー」の原点。今、ブランドでも特に人気の高いシャツやジャケットは、まさに中山さんの自分らしさの原点でもあるのです。そして、2017年の春夏、特におすすめするのは“使うジャケット”。
「これから40代はジャケットをどんどんカジュアルに着るべきだと思っています。今季の新作のブレザーは、それを体現したもの。ポケットに手を入れて着てほしくて、位置をやや外側に寄せました。ここにペットボトルを入れて歩くぐらいラフに着てほしい! 丈は前後差を出し、襟もメンズライクに大きめにしました。袖は無造作にたくしあげてくださいね。ジャケットはどうしても着せられている感が出てしまいがちだけど、違います。ジャケットは着倒して、“使うもの”だと、私は思っています」
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