2種セットのうちのバケツ型に「3本の法則」で花生け。ミモレ別注・Sghrフラワーベース2種セット(写真はバケツ型)¥21800/m-molletSTORE 素材:ガラス 

現在ミモレストアで発売中のバケツ型、ボトル型の2種類がセットになった「ミモレ別注・Sghrのフラワーベース」。日本の老舗ガラスメーカー「Sghr スガハラ」、そして人気フラワースタイリスト平井かずみさんとのトリプルコラボです。前回の記事で平井かずみさんが教えてくれた、簡単に美しく花を生けるコツ「3の法則」。今回はこの法則について、バリエーションも含めてさらに深掘りしてご紹介いただきます。

教えてくださったのは、
フラワースタイリストの平井かずみさん

profile:雑誌やCMでのスタイリング、TVやラジオ出演を通し、草花を身近に感じられる「日常花」の提案をしている。著書に『季節を束ねるブーケとリース』(主婦の友社) 『あなたの暮らしに似合う花』 (扶桑社)など多数。今回の撮影は平井さんのアトリエ「皓 SIROI」にて。アトリエでは、定期的レッスンも開催している。詳細はこちらから。

花を活けるときは「3」を意識するとバランスよく活けられるという「3の法則」。前回の記事ではバイイングディレクターの福田麻琴さんが同じ花3本を使った「3の法則」にチャレンジしましたが、今回は3種類の花を使ったアレンジを平井さんにご紹介いただきます。

簡単にバランス良く活けられる「3の法則」

ミモレ別注・Sghrフラワーベース2種セット(左・ボトル型、右・バケツ型)¥21800/m-molletSTORE  素材:ガラス


たくさんの本数がなくても大丈夫! 
日常の花のアレンジは「3本」あればOK


前回は同じ花の種類でのアレンジを教えてもらいました。今回は「3」種類の花を使って活けていきます。まずは平井さん、なぜ3本なのでしょうか?

「2本だとどうしても平面的になり、のぺっとした印象になりがちなのですが、3本あると前後、左右、上下それぞれに空間が生まれて、立体的に活けることができるんです。前回お話したとおり、同じ花を3本なら、咲き頃の違う3本を選ぶとさらに立体感が出ます。また種類が違う場合は、主役の花、添えの花、緑の葉物、と役割の違う3本を選ぶと、より表情が豊かになりますよ」(平井さん)

役割の違う3本として選んだのは、主役のフリンジ咲きのチューリップ(手前)、添えの花のスカビオサ(中)、葉物のテッセン(奥)。主役は大きめ、添えは小ぶりな花にするとまとまりやすい。
「お水は花瓶の高さの半分くらいの量を入れてから、花を活けていきます」(平井さん)


種類の違う「3本」で活けると、本数が少なくても表情豊かに

Kazumi's Comment
主役、添えの花、グリーンの3本だけですが、空間が生きているのでとっても華やかになります。花の高さは花瓶に対して基本は1:1がバランスが良いですが、バケツ型のように口が広く、高さのない花瓶なら、花のほうを短めにして、縁に沿わせるように活けるのも素敵。3本の長さにも少しずつ変化をつけると、より表情豊かに。大きな花をいちばん短くして、重心を低くすると、安定感が出て見ていても落ち着きますよ。

春の代表的な花「チューリップ」の活け方のコツって?

「『花の茎は斜めに切る』と聞いたことがある方も多いと思いますが、チューリップを始めとする球根花は例外。斜めに切って水との接地面が増えると腐ってしまうこともあるので、水平に切るようにしましょう。葉がしっかりと水に浸かると腐ってしまう原因になるので、下のほうにある葉は落とします」
「チューリップだけで活けるなら、咲き頃の違う3本で。長さも少しずつ変えて、片方の縁に沿わせるように活けていきます」


3の法則で活ければ、花の正面も横顔も後ろ姿も味わえる

「ひとつ前の写真は正面から見た表情。こちらがチューリップの横顔。同じ花でも飾る方向で佇まいが違ってきます」
Kazumi's Comment
花は基本的に太陽に向かって咲くので、正面から見るといちばんボリュームがあり、華やか。本数をたくさん用意して四方活けすれば、どこから見ても正面を見せることもできますが、数本だけで、花のさまざまな表情や佇まいを楽しむのもおすすめ。茎とのバランスを楽しめる横顔や、後ろ姿だってとっても可愛いんです。

使った花器はミモレ別注・Sghrの「バケツ型」

ブーケをそのまま活けるにも、数本だけ活けるにもバランスがいいバケツ型。高さ約12.5㎝なので、テーブルに飾っていても安定感があり、部屋にも馴染んでくれます。バケツ型サイズ/口径:約14.5cm、高さ:約12.5cm、底径:約10cm


季節を感じる枝を日常に。美しく一枝挿しする方法は?

ボトル型の花瓶の中ですっとまっすぐに伸びる枝も美しい小手毬。
「枝物はいちばん季節を感じやすい植物。玄関など人の目に触れやすい空間に飾って、季節の移ろいを楽しんで」(平井さん)

ボトル型の花器は、花はもちろん、枝を飾ることもイメージして作られました。季節が感じられることで人気の“枝物”ですが、たくさんの量を活けなくても、1本で美しい佇まいを楽しめるのが今回のボトル型の花器です。


枝物をより長く楽しむコツは「根元の切り方」

「斜めに切ったあとで、反対側の皮を削いで、水との接地面を増やす。そうすると、水をたっぷりと吸ってくれるので、長持ちします」(平井さん)

枝ものを長く楽しむコツは、根元の処理もポイント。ただ、反対側の皮を削ぐのは春夏だけ。春夏は草木も成長する時期なのでたくさんの水を必要としますが、冬はそこまで必要とはしないので、冬に枝物を活けるときは斜めにカットするだけでOKだそう。

ボトル型の花器でひと枝挿しが完成!

Kazumi's Comment
枝物はいちばん季節を感じられる植物。春から夏へ、季節が進むと緑の色も濃くなっていきますし、冬に近づくと少し黒ずんだような深い緑へと変わってきます。玄関など毎日通る場所、人の目に触れやすい空間に飾って、みんなで季節の移ろいを楽しみましょう。枝ものは口が狭い花器のほうが生けやすく、形も決まりやすいんです。今回のボトル型は、口が細くすっと伸びたデザインなので、ひと枝でも美しい佇まいに。しっかりした太さの枝や細めの枝、またお花を生けても……と万能なサイズ感です。

使った花器はミモレ別注・Sghrの「ボトル型」

枝ものを気軽に飾ることを考えてくれるボトル型。約34.5㎝でほどよく存在感はあるものの、スマートなフォルムなので、圧迫感なく、飾りやすいデザイン。ボトル型サイズ/口径:約5.3cm、高さ:約34.5cm、底径:約8cm


花を長く楽しむために行いたい「水切り」とは?


花を長く楽しむには、きれいな水にこまめに変えるなど、飾ったあとのお世話も大切。でも、事前処理がしっかり出来ているかどうかが大きく左右します。事前処理のいちばんのポイントとなるのは「水揚げ」。水揚げは、花が長持ちするように水を吸い上げやすい状態にしてあげること。いくつか方法がありますが、平井さんのおすすめは水中での「水切り」だそうです。

水中でスパッと切る「水切り」で新鮮な切り口に

たっぷりと水を張ったバケツの中で、茎の部分を切り落とします。輪ゴムなどでまとまった状態のままが一気に切りやすい(写真のバケツ型の花器は平井さん私物のもの)。

「茎の先を焼く『焼き揚げ』、湯につける『湯揚げ』など、事前処理にもさまざまな方法がありますが、いちばん簡単で効果が高いのが『水切り』という水中で茎を切る方法です。水中で切ることで断面が空気に触れることなく、新鮮な切り口からぐんぐん水を吸ってくれます」

「水切り」をしたら、あとは花瓶に活けるだけ

「花を飾った後も、こまめに水を替えたり、茎を切って新鮮な切り口にしてあげることで、格段に長持ちします。人間だって濁った水を飲んだらお腹を壊してしまいますよね? 花も人間と同じ。いつもきれいなお水の中で過ごさせてあげましょう。ガラスの花瓶だと、花の状態や水の濁り具合がひとめでわかるから、お世話がとってもしやすいんです。あとは日が直接当たる場所は、花の咲きがどんどん進むので避けたほうがベター。冷暖房の風が当たらない場所に置くこともポイントです」

平井さんが話すように「花も人間も同じ」。花にとって心地いい環境を作ってあげることが、きれいに長く楽しむコツのようです。

撮影/西あかり
取材・文/幸山梨奈