昨年販売し、ご好評をいただいたミモレ別注の「アソースメレのカシミアシルク入りストール」の第二弾として、今年は新色「ブラック」の販売を開始いたしました。カシミア20%、シルク20%、ウール60%の割合で紡績された糸で織られた滑らかな肌触り、そして大判なのに薄くて柔らかく、コンパクトにも巻ける点も魅力的なストールです。

その柔らかさの秘密について、ブランドの方に伺うと「非常にアナログに近い機械で、通常の2倍の時間をかけてゆっくり織られている」ということを教えていただきました。そこで昨年のお礼も兼ね、富士吉田にある機織り工場へ、バイイングディレクターの福田麻琴さんとお伺いしてきました。ミモレ別注ストールのモノ作りの現場をご紹介します。

繊細な糸のため、織るスピードはゆっくり
1日に織れるのは15枚まで

工場にある3台の機織り機のうち、今回のミモレ別注ストールで使う機械は1台。日本にはもう数台しか残っていないという貴重な機械を使用して織っています。


柔らかくふわっと仕上がるように、カシミア、シルク、ウールを混合して紡績している別注ストールの糸。 通常だとセーターにするような伸縮性のある繊細な糸なので、糸切れしないよう通常よりゆっくりと時間をかけて織っていきます。1日で織れる枚数は15枚程度。効率重視とはいえませんが、柔らかな風合いを出すためには大切なスピード感。そのため、このスピードを理解してくださる作り手の協力なしには成立しない作業です。

工場に糸が運ばれてくる前に、まずは海外から調達したウール(ニュージーランド産)、カシミア(内モンゴル産)、シルク(中国浙江省産)を紡績し、糸を黒に染めるのが第一段階。その糸を2460本ずつ筒に巻きつけて“整経”といわれる作業を行います。その糸が富士吉田の工場に運ばれたのち、「よりつけ屋」と呼ばれる業者さんが筒に巻かれた糸を1本1本、機械につないでいく作業をします。その準備を経てようやく、機織りがスタート。

光沢のある美しい織り生地に感動

機械で少しずつ織られていく生地。思わず見入ってしまいます。
カシミアとシルクが入ることで、上品な光沢と柔らかな風合いが出るのが特徴。また、ウールについても17.5ミクロンとかなり細い糸を使用しています。一般的に最も繊細と言われている東南アジアの人の肌でも、18ミクロン以下の細さだと肌に触れてもチクチクしないのだそう。
筒状に成形された糸から、経糸2460本、緯糸2350本が手作業で機械にセットされます。
MAKOTO's Comment
「こちらに伺って実際に拝見するまでは、スピード良く機械でどんどん織っていくイメージがありました。が、このストールは繊細な糸のため、通常の半分以下のスピードでゆっくり織ってくださっているそうで。想像以上に手作業の部分が多く、驚きました。まず最初に、糸を1本ずつ手作業で機械に繋いでいくことから始まると聞いて、せっかちな私には、もはや尊敬の念しか浮かびません(笑)。
そして「良いものを作りたい」という思いで、非常に手間のかかる作業も嫌がらずに丁寧に進めてくださっていて。実際に織られている生地を見ても、とてもキメが細かいのに軽やかで美しくて。こんなふうに1枚1枚大切に作られているものを、みなさまにお届けできるということが純粋に嬉しいです。でも、あまり一気に作れないみたいなので、お待たせしてしまうかも。その分、きっと気に入っていただけると思うので、楽しみにしていてくださいね」

温もりを感じるストール作り

この道50年だという広瀬さん。以前は隣近所に数え切れないくらいの機屋があったという富士吉田でも、いまは大手の工場を除くと、個人で機織りをしているのは10軒ほどだという。
実は世界の高級メゾンもお忍びで見学に来るという富士吉田の工場。世界から注目を浴びている理由のひとつに、日本の丁寧なものづくりの土壌があるそう。また、こういった手作業と機械のハイブリッドのような機織り機がいまも残っているのは、世界でもイタリアと日本のいくつかの地域のみなのだとか。
昨年販売したミモレ別注のグレージュがこちら。「こちらもお母さんの工場で織っていただいていたんですね! どうりで暖かいはずです」


最新の機械に比べ、人の手が介在する部分が多く、手間もかかるアナログな機織り機。ただその分、繊細な生地についても柔軟に対応することができるのだそう。
また、糸の性質によって錘(おもり)の掛け方なども異なるので、微調整も欠かせません。そのため「つきっきりじゃないと良い機織りはできない」と広瀬さん。
機械が動くなか、ずっと見守っています。

「ずっとマフラーを専門に作ってきて、それこそ子育て中は子どもを背中におんぶしながら機械を動かしてきたの。いまは周りでもだいぶ減ってしまったけれど、こんなに良い仕事はないと思ってる。家の中で出来るし、大変な人付き合いもないし、なにしろ作るものはあったかいしね(笑)」

富士吉田の工場で約160cmの幅で織られた生地は、その後八王子の工場で蒸し上げられて140cmサイズに縮ませる作業に。そうすることで、ふわっとした風合い出していきます。 その後、別の工場で1枚ずつ製品をカットし、フリンジを作り、タグを縫う等の仕上げの作業へと進みます。

ミモレ別注・アソースメレ カシミアシルク混ストール¥45100/mi-mollet STORE サイズ:約140cm×140cm  素材:カシミヤ20%、シルク20%、ウール60% 重さ:約290g 生産国:日本(山梨県富士吉田市)
MAKOTO's Comment
「こんなにたくさんの作業工程と携わってくださる方々の手を経て、やっと1枚のストールが出来上がっていたんですね。ふわっとして心地よく、あたたかいのにはやはり理由がありました。作り手のみなさんの真摯な思いを経て、品質の高いものが私たちの手に届けられているということが、今日実際にお話を聞いて、よくわかりました。

4万円台のストールは安価な価格帯ではありませんが、この手間と素材、そして仕上がりを見たら、値段以上の価値のある品物だと思いました。秋から冬のコーディネートにはもちろん、肌寒い時の羽織りやアウター代わりにも、ぜひ長く愛していただけたら嬉しいです」
撮影/前田一樹
構成/編集部