2017.4.11

「防御小物」から「キャラ変更グッズ」へ、
気がつけばメガネが楽しくなっていた

上から、新人の丸メガネ。光があたると濃いグレーが透けて明るい色に。青山3丁目のブリンクで見つけたドイツのもの。その下が「キツネ目のマダム」。フォックス型にビジュー付き、というパリの強面マダムのイメージで探したもの。表参道ヒルズの「リュネット・ジュラ」 で購入し、50代の半分をこれで過ごした。一番下はその前のもので、まだコンタクト併用時代。家の近所の眼鏡店で購入した鯖江のもので、とても軽くて楽なメガネ。

20代の頃、駆け出しの編集者だったわたしは、一人で取材に出かけるとき、いつも緊張していました。

 ある日、トイレに何度も立ち、大量の資料を落としそうになりながらバタバタと玄関に向かおうとすると、向かいの席の先輩に呼び止められました。

「モモちゃん、メガネ持った?」
先輩はいつものお茶目な笑顔で、そう言いました。

「え? メガネですか? 持ってません。今日はコンタクトで」

近眼は中学の頃からですが、当時は、ほとんどコンタクトレンズで過ごしていました。この日ももちろん、しっかりアイメイクできるコンタクト着装です。

「そう、じゃ仕方ないね。でも、緊張する仕事の時、メガネがあると落ち着くよ。相手との間に1枚、膜ができて安心するから。今度、それ用に作ってごらん」

先輩は、伊達メガネのフレームの内側から人さし指を出して、くねくね動かして見せました。緊張で泣きそうになっているわたしを笑わそうとしたのでしょう。

その日以来、メガネはわたしにとって必要不可欠な「防御小物」になっていきました。

できるだけ強面に見える、迫力のある黒縁や、癖の強い黄色のフレームなどを選んで買い、仕事に合わせてかけ替えました。

防御メガネをかけると、不思議に気持ちが落ち着きました。メガネの内側が味方の陣地のように感じられるのです。

恐がりで弱いくせに鼻っ柱だけは強い新人は、そんな防御メガネたちに守られ、助けられて、何とか成長していったのだと思います。

この春、5年ぶりにメガネを作りました。

それまでかけていた「キツネ目のマダム」メガネから、丸メガネで「おもしろ」キャラへ変わりたくなったのです。

気がつくと、メガネはもうわたしにとって、防御小物ではなくなっていました。

いつしか素のまま、ありのまま、自分の良いところも悪いところも風のように眺めながら、自然に立っている…。

そんないまの楽な境地を、あの頃の突っ張っていた、それでいて怖がりだった自分に教えてやりたい気もします。

新しい丸メガネは、いくつかの店を見て歩き、濃いグレーのセルフレームに決めました。

服は白黒のシンプルなものばかりを、スニーカーでメンズのように着たい気分になっているので、少し女っぽさを加えたくなり、真紅の口紅も購入しました。

さて、人生初の「おもしろ」キャラは、身についていくでしょうか?

メガネでこんなふうに遊べる60代を、心から楽しく感じています。

ミラノに住む友人がかけていて素敵だった印象から、老眼鏡は赤、と決めていました。これも「リュネット・ジュラ」で10年ほど前に作ったもの。