2017.4.18

正しく立ち、きれいに歩く

「感じるからだ~からだと心にみずみずしい感覚を取り戻すレッスン」(だいわ文庫) 自分の身体がきらいで、触れることもできなかったわたしが、ボディワークトレーナーの齋藤まちさんと出会い、正しく立つ、歩くことから、ゆるむこと、呼吸を深くすることなど、身体を慈しみながら上手に使う方法を学んでいく過程を描きました。最後に行きついたのは、甘く香るように歳を重ねたい、という境地。「さまようからだ」「感じるからだレッスン」「感じあうからだ」の三部構成です。

「感じるからだ~からだと心にみずみずしい感覚を取り戻すレッスン」という拙著が、昨年、7年ぶりに文庫復刊され、この3月末に復刊記念のワークショップを行ないました。

50席がHPとインスタなどのSNSで即日完売となり、予定していたミモレでのご案内をする時間がなかったことが本当に残念で、申し訳なく、少しだけ報告させてくださいね。

本書の中に登場するSさんこと、ボディワークトレーナーの齋藤まちさんとわたしが出会ったのは約10年前のこと。

雑誌の取材で、御岳山を歩きながら正しい身体の使い方を学ぶ、というテーマでした。

勝手知ったる御岳山、2周くらいできるわ、と意気揚々と出かけたわたし。ところが、山の入り口で準備運動をした時、ただ立つ、歩く、という、そんな簡単なことができていないことがわかったのです。

立ってみると、骨盤の位置が後ろに傾いていて、つまり尾骶骨のしっぽが巻き込まれていて、そのために猫背→胃が下がる→首が前に出る→顎が上がる→がに股になる、といったおばあさん姿勢。ショックでした。

しかも、なにげなく立ったつもりだったのに「ちょっと足を広げすぎです」とまちさんから指摘され、無意識に仁王立ちをしていたことが判明。

「ミツノさんは頑張り屋さんですね」とまちさんは言い、頑張り屋や負けず嫌い、努力家の女性は、自分の骨盤より脚を大きく広げて立つ傾向にあると教えられました。ハッとし、気恥ずかしくなりました。

腰幅と同じほどの幅に脚を開き、後傾でも前傾(反り腰)でもない正しい位置に骨盤を戻して立つと、腹筋にビリビリきます。

普段の動作に腹筋がまったく使われていなかったことを実感。でも、自然に上半身が腰にのっているので、肩や首に負荷のかからない軽やかな感覚が新鮮でした。

正しい立ち方を覚えたら、次は歩くレッスンへ。歩くってどういうことですか、と訊かれても普段意識したことがないので答えられず。

まちさんが後ろにまわり、わたしの鼠蹊部に手を当てて抱えるようにして、さあ、歩いてみましょう、と言われました。

後ろから強く引かれて、なかなか脚が前に出せません。

「脚はあとからついてくればいいんです、丹田を移動するだけ」そう声を掛けられ、お臍の下のあたりの丹田を意識して、そこを前に進めるような気持ちで身体を前傾させてみました。

かなり身体が斜めにかしぐので最初は怖いのですが、慣れてくると後ろ脚にギリギリまでのっている感覚が掴めてきます。ああ、これが「脚で漕がない」ということなのだな、とわかってきました。

そのあと、ひとりで歩いてみると、何とも軽い。いままでは脚だけで漕ぐように歩いていたのが、丹田が移動する、と意識するだけで、どうしてこんなに歩きやすいのか、魔法にかけられたような衝撃を受け、それがこの本を書くきっかけでした。

下の写真は、3月のワークショップの様子です。身体の中心を意識しながら揺れたり、胸や腕などのストレッチ、ヒップから太もも、膝、ふくらはぎといった身体の背面を伸ばす体操「バウンド」、そして丹田移動のワークを約1時間行い、歩く準備をします。

水道橋の「庭のホテル東京」で行われた3月のワークショップ。会場中を飛び回る齋藤まちさんの指導で、まずは両手をクロスして、身体の中心を意識しながら上げ下げする腕のストレッチを。立ったり歩いたりするワークなのになぜ腕? と思われるかもしれませんが、ひとは1枚皮でできているため、腕から肩、首の筋肉と下半身の筋肉は密接に関係しています。上半身からほぐして、全身をじっくり伸ばしていきます。

そして歩く。自然に背筋がスッと伸び、しかも静か。どたどたと音がせず、高原を渡る風のようにただ空気が流れていく。歩く班と見る班の2班に分かれると、自然に拍手が沸き起こりました。

なにか「おごそか」という言葉がぴったりだった今回ご参加のみなさんの歩く姿。昨年秋のワーク第一弾の時は、樹木や深い森が目に浮かびました。正しく身体を使った時、女性は自然とより近くなるのかもしれません。

ワークが始まった時、後ろから見ていると、仁王立ちのひとが結構多かったのです。ものすごい親近感に胸が熱くなると同時に、みんなもっと楽に生きる方法があるんだよー、と思わず心の中で呼びかけました。

後ろ脚が伸び、美しく軽やかに歩く姿は、なんだか幸せそうに見えました。身体と心はやはり一体なのでしょう。

正しく立って、きれいに歩く。それは人生の在り方でもあるように思えます。

簡単なことですが、毎日の意識は大切。わたしもたるんだ腹筋にカツを入れて、骨盤の位置を正し、丹田移動を意識することを毎日、歩くときに心掛けています。