水野優子さんのブログにご紹介されている”後家安とその妹”に伺いました。

このお芝居を拝見させていただく時は、絶対にこの着物を着ようと思っていました。

袖を通すことが少ない大島紬です。以前男物の反物を仕立てました。動くたびに衣擦れの音がして、軽くて薄いのに皺もなく下へすとんと落ちる美しさは仙台平の袴にも似た凛々しさがあります。

八掛や袖は紅絹裏(もみうら)にして、動くと深紅がちらっと見えて一瞬で男っぽい着物に色がさします。
現代では紅に染められた裏地などあまり見当たらず、着物を仕立てる際に赤の色を指定して染めていただきました。
ともするとレトロ感が出てしまう「堅物」(織)の着物を、違和感なく今風に着たいと思うのですが、普段「柔らか物」(染め)が多い私には結構難しくて…。でもお芝居の世界に混じりたくてこの組み合わせにしました。

お芝居には救いようのない悲しみ、苦しみ、恨みなどが渦巻く様々な人間模様が描かれていますが、最後にかすかな一筋の光を見るような気がします。役者さんたちの情熱と「小屋」という表現がぴったりの紀伊國屋ホール、そして新宿という街の混沌とした空気が交じり合っていたように感じながら劇場を後にしました。帰りの電車で江戸から現代に戻ってきたようでした。
もう少し公演は続きます。あと何回か拝見させていただこうかと思っています。
日々のinstagramはこちらです♡
Comment