自ら立ち上げた私塾「ATA」で小林さんは、「自分の天命や使命を知り、その自覚を持つ」ことを第一に掲げ、受講生に自分と向き合うことを促していますが、それは未来の女性リーダーに限らず、特に悩みを抱えている人にこそ、試してほしいと考えています。

 

「私たちはみんな何らかの意味があって生まれてきているし、与えられた経験もまた、意味のあるものです。今、自分が遭遇している出来事から何を学べと言われているのか、楽しいことがあれば、誰のおかげでこうなっているのか、ということをぜひ考えてみてください。さまざまことがつながっていて、いろいろなおかげがあって、自分が成り立っていることがわかると思います。その時は大変でも、後で振り返って思い出してみると、楽しかったと思えることもきっとあるはずですから」
 

 

気づいた時すぐ始めれば、間に合わないことなどない


悩みを抱えている時は、自分のことで頭がいっぱいになり、周囲が見えづらい状況に陥りやすいもの。自分と向き合うと同時に、誰かとつながること、連携することもまた、大切なことだと小林さんは示唆します。

「コミュニケーション能力は、人間に与えられた大きな力です。いろんな感情を表現できる表情筋があり、言語を持っているのは人間だけ。そういうコミュニケーション能力をフルに使わないともったいない! 私は人の悪口を言う、愚痴を言う、怒ってばかりいる人がいたら『やめなさい!』と注意しますが、それは顔が汚くなるからです。怒っている人や恨んでいる人の顔ってすごく見苦しいもの。そういう顔を自分に刻んでいくのは美容的に見ても、すごく恐ろしいことなのです。仏教の考えに、『顔施(がんせ)』というものがあります。にこやかな顔で人と接することなのですが、例えば、赤ちゃんの顔を思い浮かべてみてください。赤ちゃんの顔を見るだけで自然と笑顔が出るし、癒されますよね。赤ちゃんのように顔で施せるようないい笑顔を心がけてみるといいですよ。


今からでも決して遅くはありません。だって、細胞は常に入れ替わっているものだし、皮膚だって42日あれば完全に新しいものになります。気が付いた時から始めれば、何でも間に合うんです。よく『子どもが大きくなったら』『定年になったら』と言う人がいますけど、何かの後じゃなくて今。いっそ『定年後』『老後』という言葉は変えた方がいいと思うくらいです。私だって75歳から彫刻をはじめてもう10年。人はいつからでも変われるし、何にだってなれるんです!」

 

 

撮影/中垣美沙
取材・文/吉川明子
構成/山崎 恵

 

インタビュー前編「85歳の現役美容家・小林照子さんが今「女性の再教育」に力を入れる理由」はこちら>>

 
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