『若草物語』のときもそうだったけれど、アンニュイで儚げなティモシーが出て来ると、何やら文学的な薫りがスクリーンに立ち昇る。それも相まって余計に、サリンジャーの小説を映像で観ているような気分になったのかもしれない。元カノの妹、チャン役を演じるセレーナ・ゴメスと彼女の五番街にある家で過ごすシーンには『ナイン・ストーリーズ』や『フラニーとゾーイー』っぽい空気もあり、サリンジャーファンの私はひとりでニヤニヤ。

そして実力派俳優、エル・ファニングの演技もやっぱりすごかった。


無知で、針を刺したらパーンと弾けそうなくらいにピチピチした女子大生のエル演じるアシュレーに、ジュード・ロウやリーブ・シュレイバーら、いい歳したオッサン連中の理性が吹っ飛んでしまうのだけど、「こんな若くて可愛い女の子に『尊敬してます♡』って微笑まれたら、そりゃあ中年男はトチ狂うよな〜」と、おじさんの気持ちまで理解できてしまったのだから。

髪が薄くなってもかっこいい、ジュード・ロウの演技も良かったなぁ。

『レイニー・デイ・イン・ニューヨーク』の撮影風景。写真:Everett Collection/アフロ

そんなワケで、一緒に観に行った編集Mさんも「今まで観たウッディ・アレン作品の中でいちばん面白かった」とご満悦だったこの作品なのだけど、そのいちばんの理由は、ティモシー・シャラメが出ていたことなんじゃないか。だってイケメンって、それだけでテンションがアガる存在なんだもん。

 

もしあなたが、アメフト部の花形クォーターバックでチアリーダーの彼女がいるアメリカ〜〜ンなメジャー男子より、アートと文学に傾倒するオタク気味の男子が好みならば、この映画のティモシーに絶対ハマるはず! 仄暗いジャズバーで彼がピアノを弾くシーンには、年甲斐もなくキュンとして「あ〜! このティモシーをずっと眺めていたい、、っ!」となったのだが、ピアノを弾けるイケメンには、なぜこんなに破壊力があるのだろう。

「#MeToo」運動ですっかりハリウッドから腫れ物扱いされていたウッディ・アレンだけど、80代になってこんな作品が撮れた(※作品自体は数年前に撮影されたもので、セクハラ騒動のため公開延期になっていた模様)のは、彼の才能はもちろんのこと、ティモシーを見てインスパイアされたからなのではないかと、妄想してしまった。『アニー・ホール』のN.Y.×ダイアン・キートンも素敵だけど、雨の日のN.Y.×ティモシー・シャラメの組み合わせを思いついたウッディ・アレンって、やっぱり天才だ。

ただ、一点だけ、セレーナ・ゴメスはミスキャストな気が。キュートなセレーナのことは大好きだけれど、どう見ても彼女は5番街で育ったニューヨーカーには見えない。それじゃあ一体、誰が彼女の役を演じれば良かったのか。映画鑑賞後にずっと考えていたが、結局思いつかず。若い頃のグウィネス・パルトロウみたいに、もっとあっさりしたルックスで、女っぽくなくてサバサバした雰囲気の俳優の方がストーリー的にも納得できた気がするな〜。

とりとめのない、超・個人的なレビューになってしまったけれど、梅雨時に観る『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』、おすすめです。


前回記事「エコ・ビジネスに進出するハリウッド女優たち。新たにキャサリン・ゼタ=ジョーンズも参戦!」はこちら>>

 
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