住宅ローンを抱えている人が「少しでも軽くしたい」と思ったときに、いったい何から始めたらよいのかわからないのではないでしょうか。
そこで今回ご登場いただくのが、住宅ローンソムリエ®で、住宅ローンについてはプロ中のプロ、中村諭さんです。「住宅ローンを見直したいと思ったときに、注意点があります」とのことですが、その真意は……?
マネーコラムニスト西山美紀とマネー初心者の編集・片岡がお話を伺いました。

 

西山:40~50代は住宅ローンを抱えている人が多く、今回のコロナ禍で見直したいという声もたくさんあがっています。

中村諭さん(以下敬称略):はい、家にいる時間が増えて、家計を見つめなおして、住宅ローンの見直しに着手したいという方は多いですね。実際に弊社にご相談にいらっしゃる方も増えています。最近では、ローンの利息も含めて総支払額が3500万円ほどの予定だったのが、見直しにより3000万円ほどに減ったというケースもあります。

でも、見直す際に、ぜひ気をつけていただきたい点がいくつかあるんです。

片岡:そうなんですか! ぜひ伺いたいです。

中村:はい、以下5つお伝えします。

 


やってはいけない① 急いで繰り上げ返済をする


中村:住宅ローンを軽くしたいと思ったときに、すぐに「繰り上げ返済」を思いつく方が多いです。確かに繰り上げ返済をすることで、利息が軽くなる効果がありますが、一方で手元の現金がなくなるというデメリットもあります。

西山:時期を短くするタイプの繰り上げ返済なら、毎月のローン返済額は変わらないので、日々の家計管理は軽くなるわけではないですものね……。

中村:そうなんです。まとまった金額を繰り上げ返済することによって、今後の教育費や老後費用がなくなってしまっては大変です。繰り上げ返済用、例えばその100万円が手元からなくなっても本当に大丈夫か、トータルで考えて判断する必要があります。

片岡:コロナ禍で収入減が予想される方もいるでしょうし、今は現金を持っておいた方がいい、というのはプロの皆さんがおっしゃいますね。
 

やってはいけない② 親世代のアドバイスを鵜呑みにする


片岡:親から、「私たちの頃は繰り上げ返済をどんどんしたから、あなたも早くしなさいと言われた」という声も聞きますが……。

中村:私たちの親世代が住宅ローン返済をしていた頃は、金利がものすごく高かったので、繰り上げ返済によるメリットが大きかったことは確かです。ただ、今は超低金利なので、繰り上げ返済によるメリットは小さいです。

親御さんから「私たちは20年で完済したのに、35年もローンを組んだままなんて……」と言われる方もいらっしゃいますが、それは昔の話です。

西山:収入が右肩上がりで、退職金も年金も多かった時代とは、また違いますものね。

片岡:お金についてアドバイスをくれる人は身内が多いから、ついそのまま受け取ってしまいそう。要注意ですね。

中村:そうですね。今の時代はまた状況が変わってきています。それぞれの家計やライフプランによって打つ手は異なりますので、慎重に考えてください。親御さんのアドバイスはありがたいことですが、鵜呑みにしないようにしましょう。
 

やってはいけない③ 返済が遅れたとき、そのままにする


中村:例えばボーナスがなくなったり、収入がダウンしたりして、住宅ローンの返済が一時的に滞ってしまった場合、そのままにしておくのは絶対にやめましょう。最悪のケースでは自宅が差し押さえになってしまいます。

返済が1、2回ほど遅れてしまっている方は、すぐに借りている銀行に相談しにいくことをおすめします。

片岡:その場合、相談に乗ってもらえるものなのでしょうか。

中村:はい、特に今はコロナ禍により収入に変化がある人が増えているので、金融機関に対して、できるだけ柔軟に対応するようにと国からの通達があります。返済期間を延ばして月々の返済額を下げるほか、元金の返済を一時的にとめて利息分のみ返済する形など、さまざまな対応を考えてくれると思います。

返済に困った場合は、できるだけ早めに相談するようにしましょう。

 
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