家計の見直しの一つとして、「住宅ローンの繰り上げ返済」を考えている方もいるのではないでしょうか? 住宅ローンを繰り上げ返済することで、利息分が軽減するというメリットはありますが、実は損するケースもあるそう。
住宅ローンのプロ中のプロであり、住宅ローンソムリエ®として活躍中の中村諭さんに、マネーコラムニスト西山美紀とマネー初心者の編集・片岡がお話を伺いました。
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「住宅ローンの見直し「やってはいけない5つのこと」」>>
西山:住宅ローンを組んでいる人は、コロナ禍や老後への不安から「繰り上げ返済をした方がいいのかな」と考える人が多いようです。でも、前回の記事でも伺いましたが、実は要注意なんですよね。
片岡:「繰り上げ返済=必ずお得!」というイメージだったので驚きました。
中村諭さん(以下敬称略):はい、そうなんです。繰り上げ返済をして損するケースを3つお伝えします。
① 住宅ローン減税があるうちは、繰り上げ返済はもったいない
中村:「住宅ローン減税」といって、年末のローン残高の1%分の税金が戻ってくる制度がありますが、10年(または購入時期・入居時期によっては特例で13年)使える期間がありますので、それをしっかり使った後で繰り上げ返済する方がトータルで考えるとお得になります。
西山:特に今は超低金利で、1%よりも低い金利で住宅ローンを借りている人が多いですものね。
中村:はい、0.4%~0.6%くらいで借りている方も多いのではないでしょうか。それなら、1%との差がお得になるわけですよね。繰り上げ返済ができる貯蓄があったとしても、それはとっておき、住宅ローン減税の対象期間が終わってから検討するのも一つの方法です。
西山:繰り上げ返済を保留にしようと思ったら、そのための貯蓄をうっかり生活費で使わないように、銀行口座などを分けてとっておくと安心ですね。
② 繰り上げ返済により、団信(団体信用生命保険)の効果が減ることに注意
中村:基本的に住宅ローンを組んでいる間は、団信(団体信用生命保険)にも加入することになります。返済している人に万一のことがあった場合に、返済の必要がなくなるという保険です。
もし、「がんばって500万円貯めたので、それで繰り上げ返済をしたい」という場合は、団信という保険の500万円分も消えることになります。
西山:繰り上げ返済後に万一のことがあった場合に、団信によって、例えば3000万円のローンがなくなるはずが、手元の500万円を繰り上げ返済したために、2500万円のローンだけがなくなる、というわけですね。
片岡:500万円も損しますね。なんだか、もったいない……。
中村:金利が高かった時代は、それでも繰り上げ返済による効果が大きかったので、団信の効果が減ることと照らし合わせても、繰り上げ返済をした方がよかったこともありました。ですが、今は超低金利ですので、慎重に考えたいですね。
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