少しずつ、都内の木々も色づいてきました。秋が深まって落ち葉が目立つようになると、私はつい美しい一葉を探してしまいます。きれいな落ち葉が見つかったら、しおりにするのです。ブックカバーの色に合わせて挟むと、いつもの文庫本も特別なものに見えてきます。季節という、限定された時間の贈り物は、日本では古くから暮らしの中で生かされてきました。自然を閉め出すのではなく、受け入れて共存すること。暮らし方が変わり、畳の部屋がなくなっても、私たちのDNAの中には失われずに残っているものがあるはずです。月を見て美しいと感じること。節句を大切にする心。落ち葉ひとつにも、気持ちが動くーー日本人でよかったと思う一瞬です。