「ゆっくりされてから、午前中にいらしてくださいね」。赤倉栗園の赤倉一善さんに言われ、栗拾いは朝にするものだと初めて知った、なまけものの私です。

赤倉一善さんと妻、薫さん。代々続く栗農家の赤倉家ですが、一善さんが跡を継いだのは、なんと約8年前。それまでは、東京で写真家として活躍していました。「栗づくりに携わっていなかったからこそ、いろんな発想が湧いて、新しい試みができるのかもしれません」と話してくれました。

赤倉栗園では、農薬や化学肥料を使わず、栗を栽培していますが、収穫するのも自然にイガが開いて、地面に落下した栗の実だけ。
「食べ頃になったら、栗は勝手に落ちてきます」
と赤倉さん。揺すったり、機械を使って無理やり収穫することもなく、自然のまま、ありのまま、おいしくなったその時を待ちます。 

地面にまで光が届き、風が吹き抜ける赤倉栗園。赤倉さんが探してきた内城菌(うちしろきん)で野菜や米ぬかを発酵させた肥料を土に混ぜることで、農薬いらずの丈夫な栗が育つそう。

“八津経塚”の史跡に指定された先祖代々の土地に、ゆったりとした間隔で植えられた栗の木は、低く、横に枝を伸ばしています。道すがら、目にしたほかの畑の栗の木は背が高く、上へ上へと枝を伸ばしていて、明らかに様子が違います。赤倉さんにその理由を聞いてみました。

「ゆったり植えて、日当たりと風通しをよくしたら、農薬なんて使わなくても、虫がつかなくなりました」
「1本に実がなりすぎないように枝を大胆に剪定(せんてい)したら、枝が横に広がって、どんどん大粒の栗がつくようになったんです」

――惜しまずに手を掛ける――
――欲張らずそぎ落とす――


なにごとも、そうなんですよね・・・・・・・。
人生すべてに手を抜きがちで、強欲な己のこれまでを反省した瞬間です!

時々“ボソッ”という音がするのですが、それはイガが地面に落ちた合図。すかさず駆け寄り、イガがひらいていたら実を拾います。ひらききっていないものは、自然にひらくまで待ちます。

さて、栗の収穫期、栗園の朝は4:30に始まります。赤倉さんの妻、薫さんは、4:30に湯温処理用の機械にスイッチを入れ、本日の作業の準備開始。8:00には、手伝ってくれる仲間が集まり、3ヘクタールの栗園で、手作業で栗拾い。ふかふかの地面に落ちた栗を、ひとつひとつ丁寧につまんで拾い上げ、腰に付けたカゴに入れていきます。私も腰にカゴを付けて、見よう見まねで拾ってみますが、早くも腰が痛くてひぃひぃ言う始末。でも、雨上がりの朝は清々しく、お宝を探しているみたいでワクワクします。楽しいな♪

栗園をうろちょろする私。まったく役に立っていない、重役出勤を反省中。地面はフカフカ。でもイガはチクチク。イガは最後の最後、集めて粉砕して、土に混ぜて肥料にするそうです。無駄が無いですね。
へっぴり腰の私の、本日の収穫。赤倉さんは「まぁまぁですね(笑)」といちおうほめてくれました。すみません。栗のおしりは最初白くって、時間が経つと徐々に茶色になっていくんですって。知らなかったです。


まだまだ続きます。 
(次回(11月4日UP予定)は「赤倉栗園」の善兵衛栗、そのおいしさの秘密に迫ります!)