コロナによって多くの仕事がリモートになったことで、「いつか住みたいと思っていた沖縄に行ってみよう」と思い立ち、住み慣れた神奈川を離れてひとり沖縄本島の北部で暮らし始めたフリーライターの小高朋子さん。2021年2月の移住から1年が経ち、現在はどのような暮らしを送っているのでしょうか。前回に続き、暮らすことで知った沖縄の良さについて伺いました。

沖縄では、真夏は暑すぎて野菜が少なくなってしまいます。写真のスターフルーツは10月〜2月が収穫期。


沖縄ならではの文化に魅了されて


「移住して3ヶ月後、初めて沖縄を出て神奈川の実家に戻りましたが、飛行機から見た関東の街は建物の塊だらけで、早くも都会の空気に圧倒されてしまいました。田舎に馴染むのは早いけれど、どうやら都会に馴染むのは困難みたいですね(笑)。

沖縄に来て1年以上経ったものの、いまだにこの土地の方言は分かりません。先日地域のおジィたちに“あんた、私たちの会話分かってる?”って聞かれたんですね。半分ぐらいは分かっているつもりでしたが、蓋を開けたら結局何ひとつ分かっていませんでした……(笑)。沖縄の中でもさらにエリアごとに方言があって、今はもうそういう方言を話せる人も少なくなっているようですが、なくなってしまうのはやっぱり寂しいですね」

 


方言だけでなく、沖縄ならではの文化に触れることで、心温まる瞬間も多いと小高さんは話します。

「沖縄では昔から、親が子に食べ物を持たせたり誰かにお裾分けをする時、“マジムン(魔物)から食事を守って”という意味を込めてサンというお守りを忍ばせるんです。以前、地域の人たちとの食事会のあと、おもたせをいただいた時にそのサンをつけてくださって、それを見てとっても素敵な文化だなと思いました。素敵と言えば、私が住むエリアでは、コロナの自粛続きでストレスが高まる島民に向けて、島内放送で民謡を流していたことがあったんですね。たった20分ほどでしたが、そういうところも沖縄ならではというか、素敵な土地に暮らせて本当に良かったと思います」

サンは身近にある紐を片結びにするのが決まりで、素材は葉っぱでもティッシュでも紙でも良く、気持ちを込めることが大切なのだとか。


住んでみて分かる気候のこと


ほかに「移住したからこそ分かったことは?」と尋ねると、こんな答えが。

「沖縄の冬は風が強く、曇りの日が多いことを知りました。というか、沖縄って年間を通して割と曇りの日が多いんですよね。ガイドブックの真っ青なイメージはほんの一部で、実際はもっと穏やかで繊細な色が溢れている。それから気温の高さはもちろん知っていましたが、それより驚いたのが湿気の多さです。以前住んでいた神奈川の海辺とは比にならないほどの湿気で、信じられないものがカビてしまうんですよ。革製品はもちろん、なんなら綿の服にもカビが生えて大変なことになるので、夏に1ヶ月ほど自宅を空けた時はエアコンをつけっぱなしで行きました」

雨のあとの一瞬の美しい景色。しかしこの数分後にはまた雨が。沖縄は日本一虹を見ることのできる場所だそう。
 
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