閉じた世界の中で、外とつながることの大切さを感じる


——覚悟を決めるためには、経済的に自立していることも大切。作中にはそれを問う場面も多いですよね。

「収入を確保しておかないと、自由には動けないですからね。作中でも、暁海の父親の愛人である瞳子さんに〈お金があるから自由でいられることもある。たとえば誰かに依存しなくていい〉と語らせました。独身でも結婚していても、男性の稼ぎだけに頼ると男性が去った時に自由に動けなくなりますよね。支えがなくなっても、どんな立場でも、自分の自由を確保するのが理想だと思います」

——一方で、暁海の母は、家庭というものに依存してしまっていたのか、夫が出奔した後に苦しみます。暁海はそんな母に振り回されながらも、娘として彼女を守ろうとするさまは、読んでいて胸が痛かったです。

「専業主婦がみんなそうであるわけではないですけれども、社会とのつながりが夫しかいない状況だからこそ、それが崩れたときに苦しむ、ということはあるかもしれません。私も作家デビューする前に、専業主婦だった時代がありましたから、その感覚はわかるんです。どうしても小さい世界の中で生きることになってしまうから、小説を書くようになって、外の世界とつながることができたときは、すごくほっとしたことを覚えています。

結果として、私は離婚してしまったのですが、今は自分の足で立っていられます。そこに至るまでは、様々な選択があったので……そういった部分も今作の登場人物たちに反映されているのかもしれません」

凪良ゆう「35歳で作家になり、迷い続けてたどり着いた今」――新刊『汝、星のごとく』に本屋大賞受賞作家が託した想い_img0
写真/shutterstock

——あえて聞きます。凪良さんにとって、離婚は失敗でしたか?

 

「難しいですね。私の場合は手に職があり、たまたま自分で自分を養っていくことができました。だから離婚は失敗ではなかったと言うことができますし、やはり女性が自分で稼ぐことは重要だと思っています。ただ、経済的に自立しているからといって、ずっと一人で幸せに生きていけるとは限りません。

私も離婚後の4〜5年は、時間に余裕があると余計なことを考えたり、孤独を感じてしまったりするから、そこから逃げるように、朝から晩までガムシャラに仕事をするだけのマシーンと化していました(笑)。一人暮らしをするために引っ越した家で、仕事用の机を買う時間すらも惜しくて、段ボール箱の上にノートパソコンを置いてひたすら原稿を書いていましたね」