父親の傷つきやすさや弱さに、多くの男性が共感してくれた

ブレイク確実の俳優ポール・メスカルの“最高の瞬間”を見逃さないで!世界が絶賛の映画『aftersun/アフターサン』で体現する“男性の弱さや繊細さ”_img0
『aftersun/アフターサン』 5月26日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿ピカデリーほか全国公開 配給:ハピネットファントム・スタジオ © Turkish Riviera Run Club Limited, British Broadcasting Corporation, The British Film Institute & Tango 2022

――わたしは多くの人と同じように、ポール・メスカルとドラマ「ノーマル・ピープル」で出会い、彼の繊細な存在感に魅了されました。彼の俳優としてのどのようなところが魅力的で、また、どのようなところが本作にフィットすると考えましたか?

わたしも「ノーマル・ピープル」を観てポールの演技に魅了されていたのですが、彼を選んだ理由はいくつかあります。まず、ひととしての温かさ。それに、安定感のある体つきですね。彼のキャラクターは精神的な病を抱えているのですが、それを少しずつ作品のなかで明かしていきたかったので、あからさまな弱々しさは避けたかったのです。

 

そして、このプロジェクトについて話し合ったときに、彼自身がこの作品に強く思い入れを抱いてくれたことも大きかったです。この役を演じるためならいくらでも努力をすると言ってくれました。これらすべてをひっくるめて、彼しかいないと感じました。わたしはつねに信頼できるコラボレーターを探しているので、彼がそこにピッタリとはまった感じですね。はじめに電話で話したときからすごく高揚感があったのですが、彼がいまこうして高く評価されていることは、わたしにとってもとても嬉しいことです。


――ポール・メスカルの存在感もあり、『aftersun/アフターサン』では、世間で見過ごされがちな男性や父親の繊細さや傷つきやすさが丁寧に描かれているように思います。男性の繊細さを描きたいという意識はあったのでしょうか? それとも、あくまでパーソナルな視点で描いていたら、自然に現れたものなのでしょうか?

ブレイク確実の俳優ポール・メスカルの“最高の瞬間”を見逃さないで!世界が絶賛の映画『aftersun/アフターサン』で体現する“男性の弱さや繊細さ”_img1
『aftersun/アフターサン』 5月26日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿ピカデリーほか全国公開 配給:ハピネットファントム・スタジオ © Turkish Riviera Run Club Limited, British Broadcasting Corporation, The British Film Institute & Tango 2022

それは興味深い質問ですね。そうですね、この映画はつねにソフィの視点から描かれているわけですが、これまで映画であまり見られなかったような父親を描きたいというのはありましたし、自分の父親との体験を基にした部分もあります。わたしの父親は世界に対してとてもオープンで、娘の視野を広げてくれるようなひとだったので、そういった部分をカラムという人物に取り入れたかったのもあります。そういったことを念頭に置いてカラムを描きましたが、どちらかというと意識的というよりは結果的に生まれたものではありますね。ただ、カラムの描き方に細心の注意を払ったのも事実です。脚本の最終チェックでカラムの言動をすべて並べて、不自然なところはないか確認しましたしね。

この映画を観た多くの男性から、傷つきやすさや弱さにおいても「カラムに共感を覚えた」という感想をいただいていて、それはわたしとしても意外なことでした。

――カラムの姿が現れるときに、直接彼を映さないシーンがありますよね。たとえばビデオの映像のなかだけでなく、鏡やテーブルの反射を使った画面が印象に残りました。わたしはそれらを、記憶のなかの父親との距離を示すものだと感じたのですが、それらの「反射」を使った映像はどのような意図があったのでしょうか?

脚本や映像においてカラムをどのように描くかというのは、とくに時間をかけて練り上げていった部分ですね。どのような視点で彼を映すか、撮影監督のグレゴリー・オークと話し合いました。カラムを直視している視点、幼いソフィの視点、大人のソフィの視点……というように。その結果、カラムがひとりでいる場面は、大人になったソフィが想像しているものだという結論に達しました。それをどのように描くか考えたとき、遠めに映したり、何かに反射している姿を映したり、部分的にしか見えなかったり、鏡に映っていたり。それらのピースを集めることで、大人になったソフィが父親を理解するという流れを作りたかったのです。