ベンチャー企業家だった父が急死し、母は車いすユーザーに。弟はダウン症で、祖母にはものわすれの症状が……。ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』(NHK BSプレミアム/以下『かぞかぞ』)は、作家・岸田奈美さんの家族を題材にした(ほぼ)トゥルーストーリーです。

第1話の終盤で、「家族の死、障害、不治の病。どれかひとつでもあれば、どこぞの映画監督が世界を泣かせてくれそうなもの。それ全部、うちの家に起きてますけど?」という台詞があるのですが、たしかに“泣ける”要素が詰まりまくっていますよね。きっと、お涙頂戴の方向に持っていくこともできたと思います。

でも、次々とありえないことが起きるてんやわんやな日々を、「もうあかんわ〜」と笑い飛ばしながら、明るく生き抜いているのが岸田家の素敵なところ。岸田さんのエッセイやnoteを愛読している私は、「空気感がそのまま反映されているといいな〜」なんて思っていたのですが、期待以上の出来上がりで感動しました。

 


タイトルに込められた意味


まず、『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』というタイトルがいいですよね。岸田さんが紡いだエッセーのタイトルにもなっているのですが、これには“家族だからって、愛さなければいけないわけじゃない”という意味が込められているようです。

つまり、岸田さんとドラマの主人公の岸本七実(河合優実)は、家族を愛しているからともに生きているということ。当たり前のように聞こえるかもしれないけれど、家族だから一緒にいるのと、愛している家族だから一緒にいることを選択しているのでは全然ちがう。

「家族なのに愛せないのはおかしい」とか、「家族だから面倒を見なければいけない」とか、この世界にはたくさんの固定観念が存在するけれど、一旦フラットにして考えると見える景色が変わってきます。家族を愛すること、家族とともに生きることに選択権が与えられることで、“負荷”が消え去るというか。家族を愛している人も、家族を愛せない人も、このドラマを観ると生きるのがちょっぴりラクになるんじゃないかな。


悲劇を喜劇にする方法を教えてくれる


「人生はひとりで抱え込めば悲劇だが、人に語って笑わせれば喜劇だ」

ドラマ『かぞかぞ』は、原作者の岸田さんの思いが大きく反映されています。父が亡くなったり、母が病に倒れたり、「ダウン症の弟の面倒を見られない」と彼氏に振られたり……たくさんしんどいことが起きているのに、なぜかしんみりしない。観終えたあとに、心地いい爽快感が残るんです。「七実みたいに、あっけらかんと生きられたらなぁ」って。

七実も、最初はあっけらかんと生きる“ふり”をしていたのかもしれません。でも、今ではそれが板についている。人生は、いいことよりもしんどいことの方が多いんじゃないの? なんて思ってしまうこともあるけれど、どうせしんどいことばっかりな人生なら、せめて笑い飛ばしていこう。『かぞかぞ』からは、そんな力強いメッセージが伝わってきます。


個人的に、今期一の名作だと思っている『かぞかぞ』は、NHK BSで日曜夜10時から放送中! 水曜夜11時からは、再放送もあります。NHKオンデマンドでは、1話220円の買い切りで視聴ができるので、興味のある方はぜひチェックしてみてください〜!

 

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