作家・ライターとして、多くの20代~40代の男女に「現代の男女が抱える問題」について取材をしてきた山本理沙。その赤裸々な声は、まさに「現実は小説より奇なり」。社会も価値観も変化していく現代の家族の在り方を浮き彫りにします。

今回取材したのは、現在夫と別居中の小百合さん(仮名)30歳。彼女は10代でひと回り年上の夫と出会い、2ヵ月後に妊娠発覚、結婚されました。若かった当時の彼女にとって、大人で包容力があり、経済力もあった彼との出会いは「運命」と思え、また周囲からも「玉の輿に乗った」と羨まれていたそうですが、産後に夫は豹変……。

彼女を待ち受けていたのは、夫のモラハラと孤独に満ちた日々でした。

 

取材者プロフィール
 小百合さん(仮名)30歳
職業:広告代理店勤務 
家族構成:別居中の夫、10歳と8歳の息子さん

 
 

30代の男性が19歳の女子大生を甘やかす「違和感」


最近30歳になったばかりで、現在夫とは別居中、小学生の男の子2人をほぼ1人で育てているという小百合さんですが、とにかく「若い」という第一印象です。

シワひとつない若々しい滑らかなお肌は羨ましい限りで、お子さんが2人いるようにはとても見えません。愛くるしい表情からは一見想像もできませんが、彼女は20代の時間をほぼ家庭に注ぎ、身体に支障をきたすほど孤独に過ごしていたと言います。

「夫との出会いは、大学1年生のバイト先です。彼はそこの責任者でした。見た目もかっこ良く優しくて、初対面はすごく好印象でした」

当時19歳だった小百合さんは、大学進学のために地方から1人で上京。生活費を稼ぐため結婚式場でアルバイトを始め、そこで12歳年上の夫と出会いました。その結婚式場は彼の親が経営しており、彼は社員として働いていたそう。

彼の方から熱烈なアプローチを受け、2人はすぐに交際を始めました。

「東京に出てきたばかりで年上の彼氏ができて……当時は『ラッキーだな』なんて思っていました。というのも、彼はフェラーリで送り迎えをしてくれたり、デートのたびに高価なプレゼントを買ってくれて。ブランド物のバッグやアクセサリー、数回目のデートで連れて行かれた高級な温泉旅館など、少し前まで地方の高校生だった私には縁のない体験でした。……今思えば、ぜんぶ親のお金だったんですけど」

これまで様々な夫婦やカップルの話を取材してきた経験から、「30代の男性が10代の女性を必要以上に甘やかす」という冒頭のお話だけで「怪しい」と感じてしまいます。

けれど大学1年生といえば高校生の延長のような年齢でもあり、経験も当たり前に少ない中、相手を疑うことはもちろん難しいはず。むしろ小百合さんは、夫を白馬の王子様のように感じていたようです。

けれど、童話のようなシンデレラストーリーが成り立つことは、残念ながら現実には少ないのです。

「私自身も驚きましたが、付き合って2ヵ月後に妊娠が発覚しました。大学1年生の夏休みのことです。さすがにスピードが早すぎるとは思いましたが、夫も夫の両親も喜んでいました。私は両親が離婚していて父子家庭なのですが、父に報告したときも驚きはしたものの、堕ろすのは反対と言われて。

なので、自然と産む選択になりました。若さと勢い、と言えばそれまでですが、不安も特になかった。周りの友人にも『すごい! 玉の輿じゃん!』と羨まれたりして、私自身も運命だと思ったんです。

そして大学を辞め、夫と結婚することになりました」