自信がないからこそ、常に試行錯誤


——歌っている最中はどんなことを考えてらっしゃるんですか。

前川:あと何曲で終わりだなと、そういった時もあります(笑)。何十年もやっていますから、あっという間に、「お! 終わった!」という時もありますし、「あと何曲で終わるのかな……」と思う時もね。そう思うのも、お客様の雰囲気ですよ。

お客様の中にも、暇だからとか、会社がお金を出してくれたとか、そういう方もいらっしゃるでしょう。全員が全員ファンだから来られたと思わない。ファンの方ってのはわがままを聞いてくれるんです。だから、ファンじゃない方に、「興味もなかったんだけど、来てみたらなんだ意外とよかったな」と思ってもらいたいんです。

——ラジオショーでも、いっぱいお客さんがいて、1000人の会場で999人入っていても、残りの1席が気になる、とおっしゃっていましたね。ヒット曲が出ても、常に危機感があるんだと。ある意味、慢心しないというか、常にご自分を引いて見ていらっしゃる。

前川:自信もないし、慢心も生まれようがないんですけどね。どんなこともマイナス思考に考える自分がいるんです。歌ばっかり歌ってても、お客様は飽きる。お客様は勝手ですね(笑)。めちゃくちゃ自由ですよ。

「自信がないから今でもステージの前はアガる」「人を感動させているとは思わない」前川清に学ぶ、ネガティブだからこそ生まれる強み【インタビュー後編】_img0
 

前川:それをいかに、帰る時に眠くなかったなとか、面白かったなと思ってもらえるか。「歌が良かったね」ではなくて、「楽しかったな」と思って欲しい。そういったものを目指して、こなしてこなして、時にごまを擦りながら、とにかくいろんな方法で。

 

——生のお客さんと向き合うわけですから、どれだけ経験を重ねても、慣れるっていうことはないのかもしれませんね。

前川:例えば、早く来た人から前の席を取れるという場合、席を取るために朝早くから並ばれるんです。いざ始まると、前の方の席のお客様があくびをして、しばらくすると寝てるんです。歌を一生懸命歌うんだけど、子守歌に聞こえる。だから、2階席とか、後ろのお客様の方が「わあああ」って盛り上がってるのに、前のお客様はちーん、となってるわけです。そういう時は、歌を止めて、面白い話をする。そうすると、眠っていたお客様が目覚めるんです。

お客様によって、ステージが成り立つ、成り立たないというのはあります。自分の力ではどうしようもないステージっていうのはたくさんありました。生のお客様から育ててもらったっていうのはありますよね。