「悲ロ活」は簡単。そのやり方をお教えします


やり方は簡単。深夜にタクシー、終電、終バスに乗ったり、繁華街をあてどもなく歩いたりすれば準備万端も満タンで、さらにそこに「悲ロ活」の為に選りすぐった歌謡曲、バラード、インスト曲が加われば、絶品の悲ロインがここに爆誕。

今まであった納得いかなかったこと、悔しかったこと、理不尽に感じたこと、痛かったことなどを思い出してもよし。自分のだめだめさ、ちょっとした失敗、けっこうな失敗、ひとりぽっちさを思い出すのもよし。そのときの気分に合わせて、自分に起きた&起きている悲劇的なことを盛り上げて、窓ガラスに額を当てながら、歓楽街のキャッチのお兄さんたちが私に声をかけようとしてやめる姿を感じながら、泣きます。

するとどうでしょう。さっきまでのありふれて見慣れていた無感情ノーコメントだった世界がなんだかいつもとは違う光り方をして、あなたのことを照らしだす。きっといまこの姿をエマニュエル・ルベツキが撮影していて、のちに数々の映画祭で私は最優秀悲劇のヒロイン賞を受賞すること間違いなし。スクリーンの中にいる私を私が観ているような気分になって、気が済むまで悲ロインになりきり、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督のカットの声がかかり「今のよかったよー」とイニャリトゥをはじめイニャリトゥを取り囲むイニャリトゥ的な人々に労われながら、悲ロインの衣装を脱ぎ、メイクを落とし、現実世界へと帰還して何ごともなかったかのようにお茶碗を洗い、靴下に空いた穴を繕う。

そのようにして無感情になりがちな生活に起伏をもたせ、自分が自分の人生の主人公なのだということと、色々あったりなかったりしたけど無事に生きていることの有り難さを思い出させてくれる悲ロ活は私にとって必要必需の気分転換というか、もはや癖なのだけれど、この活動の発端は一体何だったのだろうかと記憶を辿れば、思いもよらない幼少期の頃の思い出とコネクトしていることがわかり、私は自分でも知らなかった「悲ロ活をするようになった本当の理由」に、どーん!と気づいてしまったのであった。

「今週会話したのはスーパーで『袋、大丈夫です』と言ったのが最後やな」そんなとき実行する私の秘策【坂口涼太郎エッセイ】_img0
 


〈後半〉につづく…!
 

 


<INFORMATION>
坂口涼太郎さん出演
『ACMA:GAME アクマゲーム』
毎週日曜よる10時30分 日本テレビ系で放送中

「今週会話したのはスーパーで『袋、大丈夫です』と言ったのが最後やな」そんなとき実行する私の秘策【坂口涼太郎エッセイ】_img1
 

日本有数の総合商社・織田グループの御曹司だった織田照朝は、13年前、父・清司を正体不明の男に殺され、全てを失った。犯人の目的は、清司が持っていた1本の古びた鍵……。その鍵を手に入れた者は、集めた鍵の数だけ運気が上がり、99本集めると、この世の全てを手にすることができるといわれる「悪魔の鍵」だ。
殺される直前の父から「悪魔の鍵」を託された照朝は、海外に脱出。以来、世界中を渡り歩いて「悪魔の鍵」の秘密を追っていた。そして──父の無念を晴らすため13年ぶりに日本に戻って来た照朝は、「悪魔の鍵」を狙うライバルたちとの命懸けの頭脳バトル「アクマゲーム」に巻き込まれていく……!
人知を超えた悪魔の力がいざなう、命を賭けた頭脳×心理戦!果たして父を殺した男の正体は!? 負けたら最期…極限の遊戯(デスゲーム)が始まる!!


文・スタイリング/坂口涼太郎
撮影/田上浩一
ヘア&メイク/齊藤琴絵
協力/ヒオカ
構成/坂口彩
 

「今週会話したのはスーパーで『袋、大丈夫です』と言ったのが最後やな」そんなとき実行する私の秘策【坂口涼太郎エッセイ】_img2
 

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