とりあえずデザイナーさんとの打ち合わせに向けて、参考となる事例をピックアップしたり、Googleで検索して好きなインテリアの画像を収集したり、どんな部屋がいいか自分なりに考えてみました。

で、それらに共通する要素をまとめてみると「インダストリアル」とか「ブルックリンスタイル」とか、『BRUTUS』のインテリア特集で100回くらい見たワードが出てくるわけです。所詮、僕は『ロンバケ』世代。あの瀬名マンに夢を見た人間です。磨りガラスの木製ドアがある部屋に憧れたし、ワインの木箱をテーブル代わりにパーティーがしたかった。


デザイナーさんとの1回目の打ち合わせも、ふた言目には「そうですね。ここはインダストリアルな感じで……」ばかり言ってた。合間に「ブルックリンスタイルとか素敵ですよね」を挟み込んでいた。インダストリアルとブルックリンしか武器がない。「あー」と「うー」だけで意思表示する赤ちゃんくらい語彙が少ない。

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「インダストリアル」「ブルックリンスタイル」のイメージ。写真:Shutterstock
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写真:Shutterstock

そんなこんなで迎えた2回目の打ち合わせ。デザイナーさんから上がってきたプランは、めちゃくちゃ普通の部屋だった。壁と天井は白のクロス。床はフローリング。廊下とキッチンはダウンライト。で、メインの部屋はよくあるスポットライト。

……インダストリアル、どこ行った??

別にそれが悪いというわけではないけれど、これくらいどこにでもある仕様だったら、わざわざ高いお金を払って自分でリノベーションをしなくても、リノベ済みの中古マンションを買えばオッケーでは……と思わざるを得ない。

 


そして、このとき、僕は知ったのです。自分のイメージを具現化したいなら、もっと解像度を上げなければいけないと。「インダストリアル」と一口に言っても、その言葉から連想するイメージは十人十色。ちゃんと相手と目線を揃えるには、より具体的なワードで、ひとつひとつグリップを握っていかなければならないのです。

つまり「最初からオシャレに仕上がってる部屋に住めば一件落着じゃ〜ん」という丸投げスタイルの人間は、リノベーションには最も不向き。むしろ1から10まで自分で決めたい! クローゼットの取っ手も、トイレットペーパーホルダーも、全部思うままに決めたいという人でなければリノベーションは務まらないということに、やっとこさ気づいたのでした(遅い)。

正直、この時点でかなり面倒くさかった。でも、このままオーソドックスなデザインでGOを出してしまったら、なんのためにリノベをやったのかわかりません。すでに打ち合わせは2回は消化している。はたして残る2回で本当に自分の理想の部屋はつくれるのか……? 心の中で中島みゆきの『地上の星』を流しながら、僕のプロジェクトXがようやく幕を開けたのでした。
 

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本書では、自分が嫌いなことには誰にも負けない自信のある(?)著者が、

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構成/山崎 恵
 

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