インダストリアルなお部屋に住みたいという憧れはありつつも、「インダストリアル」という単語の一点ゴリ押しではデザイナーさんにやりたいことがまったく伝わらなかった僕。理想のお部屋づくりに向けて、もっと自分のやりたいことの解像度を上げることが求められました。
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ここでいう解像度とは、床・壁・天井といった各部位をどんなものにするか具体的に決めることです。今まではお部屋の事例を見ていても、漠然と「オシャレ〜」としか思っていなかった。それに対し、自分はこのインテリアのなににオシャレさを感じているのか細かく検証をする。僕の感じるインダストリアルとはなんなのかを、つぶさに言語化していく作業が必要となったわけです。
3回目の打ち合わせは2週間後。それまでひたすらYouTubeのルームツアー動画などを巡回しながら、気になるお部屋の特徴を洗い出していきます。そして、これは自分の家でも取り入れたいと思う要素をリスト化する。ただし、物事には予算というものがあるわけで、当然できることとできないことがあります。
たとえば、最初にやりたいと思ったのがヘリンボーン床。ヘリンボーンとは、直訳すると「ニシンの骨」。まるでニシンの骨のように、床材をV字型に組み合わせていく方法です。床がヘリンボーン模様になるだけで個性が出るし、ヴィンテージ感もあっていいなと思ったのですが、予算が一気に上がるため断念。他にもルーバー天井といって、天井に羽板という細長い板を等間隔に通す仕上げにも憧れたのですが、こちらもやはり予算オーバー。
オシャレなお部屋に必要なのは、金! そんなあたりまえ体操が頭の中で流れます。
太い実家も油田も持ち合わせていない庶民の僕にできることは限られている。もっとお金をかけずに、部屋の印象をガラッと変えられる方法はないか。うんうんとうなり声を漏らす日々の突破口となったのが、照明のスイッチでした。
この仕事をしていると、タレントさんの撮影でよくハウススタジオを借ります。こうしたハウススタジオというのは写真映えするように凝ったインテリアになっているのですが、取材で訪れたとあるハウススタジオにヒントが転がっていたのです。それが、「アメリカンスイッチ」と呼ばれるもの。
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近年の日本のマンションのスイッチは、シンプルな埋込スイッチが標準です。一方、アメリカンスイッチというのはレバーがつまみ状になっていて、それを上下もしくは左右に倒すことで電気回路を切り替えます。よく古い工場なんかで使われているアレですね。スイッチがこのアメリカンスイッチになるだけで、部屋のインダストリアル感が一気に増す。しかも、アメリカンスイッチにするだけなら予算的にも大きな変化はありません。このアメリカンスイッチを見つけたときに、自分のやりたいインダストリアルとはなにかがようやく見えてきたのでした。
要は、配管などをなるべくむき出しにして、無骨な雰囲気をつくり上げること。言葉にしてみると、インダストリアルの王道そのものなのですが、そこに自分で辿り着くには試行錯誤の回り道が必要だったのです。
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