「認知症介護」の現実を、温かい気持ちで知ることができるエッセイ
 

 

「認知症介護」というとどのようなイメージをお持ちでしょうか? メディアではことさら過酷な面が強調されていることもあり、「きつい」「怖い」といった印象を抱いている人も多いのではないでしょうか?

ちなみに、筆者は自分が入院したときに何度か認知症の患者さんと同室になったことがあるのですが、過酷さという意味でいうと「メディア情報はあながち間違っていない」と思いました。

意味不明の用事で何度もナースコールを鳴らす。帰宅すると駄々をこね、なだめようとする看護師に殴りかかる。消灯後にイヤホンをせず大音量でテレビを観る、などなど。

筆者なら1日どころか1時間で音を上げるだろうと思うほどストレスフルな状況でしたが、そこに淡々と向き合う看護師さんたちを見るにつけ、頭が下がる思いがしました。同時に、彼らが平然としていられる理由を知りたいという好奇心もわいてきたのですが、ふたたび殺伐とした気持ちになるのが嫌で、申し訳ない気持ちはありつつも認知症介護関連の手記や記事からは目を背けていました。

 

もし、今でも筆者と同じようなジレンマを抱えている人がいたらぜひ読んでいただきたいのが、グループホームの現役介護職員がつづった『気がつけば認知症介護の沼にいた。』というエッセイです。

著者の畑江ちか子さんはオタク歴20年という筋金入りの推し活ヲトメということもあり、辛い状況にぶち当たっても持ち前の脳内変換で鮮やかに切り抜けていきます。さらに、そのユーモラスな筆致からは畑江さん本来の優しさを感じることもでき、温かい気持ちに包まれながら認知症介護の現実を知ることができました。

今回はそんな本書から、筆者が常々気になっていた介護職員の「本音」について語った部分をご紹介したいと思います!