【ミモレ別注】マチュアーハのWPブレードハット¥25850/mi-mollet STORE

ミモレストアで現在販売中の、神戸発の帽子ブランド「マチュアーハ」と別注した、ウォータープルーフのブレードハット。エレガントな見た目ながら、たたんでコンパクトに持ち運べる仕様や、撥水加工がついた機能性で、日常で気軽に愛用できる点も魅力です。本日は、そのこだわりの帽子作りについて、神戸のアトリエにデザイナーの高田さんご夫妻を尋ね、お話を伺いました。

定番商品のボックスドハットを撥水仕様にアップデート

ディレクターの高田雅之さん。

「僕は昔から『帽子を作って生きていく』と決めていたようなところがありまして、学生時代から帽子作家さんのところでお手伝いをしていました。卒業後は帽子メーカーに入り、その後独立という流れです。作家さんの手作りの方法とメーカーでの作り方、その両方を学んでいる人はあまり多くはないので、そういう点も、自分たちのオリジナリティーとしてデザインに落とし込めているのではないかな、と思っています。
独立して妻と二人でお店をはじめた時は、最初はセレクトがメインでした。その後オリジナルのような形で少しずつ作っていったのが、ちょうど20年前くらいですね」(雅之さん)

奥様でデザイナーの高田ユキさん。

「その後に今の『ボックスドハット』(※マチュアーハの定番商品)の素材であるペーパーブレードに出会いました。紙幣などの原材料として使われる“アバカ”という植物の繊維を紙にして撚り合わせ、糸状にしたテープ状の素材です。とても軽く、気軽に折りたためるという新しい素材の特徴に、とても心惹かれました。それまで布素材などは別として、麦わらのような植物由来の帽子で折りたためるのは、高級なパナマ帽くらいしかなかったんです。そこで、自分たちもこの素材で何かできないか……と試行錯誤のなかで生まれたのが『ボックスドハット』でした」(雅之さん)

マチュアーハの人気定番商品「ボックスドハット」は、四方に折り畳んで収納が可能。
「たためるという素材の特徴を活かして『帽子をシャツのように箱に入れたい』と言ったのは主人だったのですが、それを聞いて、かつてロンドンのカフェで見た、着古したデニムがまるで絵画のように額装された風景と重なって……。それが、箱の形に合わせて折りたたむという、ボックスドハットの形状の元になりました」(ユキさん)

「その後、私たちがノルウェー旅行に行ったときに、国立の自然公園の中にある、いわゆる“ランドスケープホテル”と呼ばれる美しい景色のホテルに宿泊したんですね。宿泊者全員で集まって食事をするような、小さな農場のような素敵な場所だったのですが、そこのオーナーの男性に自分たちの帽子をプレゼントしようと思い、持って行ったんです。でも行ってみたら、ホテルの周囲は霧というか雨というか、もうずっとそういう状態で。6月ぐらいなんですけれど、すごく寒いんです。夏が短いうえに、ほぼ小雨や霧のお天気が続くので『こういう帽子はすぐ駄目になるからかぶれない』と言われて。
私たちの日常でも、フェスやバーベキューなど1日中自然のなかにいると、急に雨が降ってくるシーンは結構ありますよね。すぐ止むこともありますが、こういう植物由来の素材の帽子ですと、縮んでしまったり、型崩れをしてしまうので、気軽にかぶれない。このノルウェーでの出来事もひとつのきっかけとなって、ペーパーブレードの素材で撥水の帽子が作れないか、という相談を始めました。

そこで、長年お付き合いのある工場さんに“糸の状態で撥水加工をかけることは可能ですか”という相談をしまして、オリジナルで作っていただいたのが、今回の別注でも使っているウォータープルーフのペーパーブレードなんです。メーカーさんからも当初は『そんなの無理だろう』というご意見もあったんですが、いろいろとトライをしてくださって、念願叶って無事完成しました」(雅之さん)

撥水加工の施されたペーパーブレードを使用。【ミモレ別注】マチュアーハのWPブレードハット¥25850/mi-mollet STORE 

「撥水加工をしたことで、急な雨でも後でちゃんと拭けば形が崩れにくいですし、汚れもつきにくいのが特徴です。例えば帽子の形に成型した後で撥水をかけるということもできなくはないと思うのですが、帽子の目が塞がれてしまうんですね。かぶっていると暑くなる。一方、これは糸状の段階で撥水をかけているので、通気性が守られています。夏の日差しの下で使う快適性を考えると、涼しさも大事ですよね。なので、そこはこだわりました。この帽子の撥水性は水も汲めるくらいなんですが、帽子の目が塞がれていないので、しばらくするとちゃんと水がしたたってきます。そして、糸自体もすごく細くしているので、軽い上に、繊細な印象に仕上がるのも特徴です」(ユキさん)

糸状になったペーパーブレードの素材を、専用のミシンで頭から筒状に縫い合わせていく。ブレードの幅が細くなるほど、縫う時間が長くなり、縫う回数も増えるため、失敗も増える。そのため、熟練の高い技術が必要となるのだそう。


その日の着こなしや髪型に合わせて
つばの表情もアレンジ可能


「どちらかというと、私達の帽子作りは素材ありきで始まり、そこから帽子としての機能性やかぶり心地、さらにかぶったときのシルエットや洋服とのバランスなどを検討しながら、幅広い用途で選んでいただけるように作っています。
この別注の『WPブレードハット』は形としてはすごくエレガントですけど、日常使いできる素材なので、小さなお子さんがいらっしゃって日傘を持てない、というような場合でも小さくたたんでバッグに入れて持ち運びができますし、バーベキューやフェスなど自然の中でもお使いいただけます。
もちろん繊細な素材ではありますので、布の帽子のようにガシガシ使えるかと言われればそこまでではありませんが、あまり神経質にならずに気軽にお使いいただける帽子だと思います。また、日差しを避けるという意味でも、つばの長さも通常よりも少し長くして、自由に曲げたり、上げたりして、表情を楽しめるデザインになっています。その日の髪型に合わせて、つばの形を細かく調整できるのも特徴です。

お手入れとしては、湿気が溜まるとどうしても素材を傷めてしまうので、雨などで濡れたら布で拭いて乾燥させ、湿気を飛ばしていただければ大丈夫です。長期間保管するときは箱に入れれば場所をとらない点も、この素材の良いところですね。ぜひ、毎日の暮らしで気軽に帽子を楽しんでいただけたら嬉しいです」(ユキさん)

写真左上から時計回り・今回別注したグログランのリボンは、すべてアトリエで手付けで仕上げられている。(右上)仕上がった帽子は、1つ1つ丁寧に折りたたまれ、箱に収納して出荷される。(右下)アトリエとショップが入っているのは、築112年、国の登録有形文化財にも登録された石造りの美しいビル。(左下)神戸・元町にあるショップには様々なデザインの帽子が並び、実際に手に取って試すことが可能。

撮影/山口真一(アトリエ取材)、大石葉子(スタジオ静物)
取材・文/ミモレ編集部