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先月、渡米してメジャーリーグ観戦を楽しんできました。
この連載でも紹介したドキュメンタリー『憧れを超えた侍たち 世界一への記録』を観て以来、野球への関心がグッと高まっているなか、本場で観戦できることに。
小さい頃からサッカーの試合はよく見ていたのですが、野球観戦のために球場に足を運んだことはあまりなく、野球の試合ってこんなにも見応えがあるんだ! と改めて感動しました。

 

まずはサンディエゴにあるパドレスの本拠地、ペトコパークへ。
パドレス対ドジャース戦では、選手たちの声やボールがバットに当たる音が聞こえるような席で観戦。
ロサンゼルスドジャースタジアムで観戦する機会にも恵まれ、それぞれの球場の雰囲気の違いを感じることもできました。
大きさに圧倒されたドジャースタジアムに対して、ペトコパークは地元の方たちに親しまれている身近な球場という印象を受けました。

タイミングよく観戦した母の日の試合では、選手たちのユニフォームやバットにピンク色があしらわれるイベントも。

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ダルビッシュ選手もピンク色のグローブです。

日本のプロ野球でも行われているそうですが、とても素敵な企画ですよね。甥っ子へのお土産としてTシャツを購入しようと立ち寄ったショップでは、大谷翔平選手の人気で日本人の観客が増え、店員さんが日本語を勉強中とのこと。
実際に日本人のお客さんもたくさん観戦していて、大谷選手の影響力の大きさを感じました。

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ドジャースタジアムでは大谷選手も間近に観られました。

メジャーリーグにはベネズエラやドミニカ共和国出身の方をはじめスペイン語を話す選手も多く、お話しさせてもらう時間も。
野茂英雄選手と同じ時期にご活躍されていた元キャッチャーのカルロス・ヘルナンデスさんとも、かつて野茂選手からサインボールをいただいた話で盛り上がり、貴重なお時間をいただき感謝の気持ちでいっぱいです。

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実際に観戦してみて感じたのは、試合の熱気や迫力だけではなく、選手の方たちのアストリートとしてのストイックな存在感です。
鍛えられた大きな体であの小さなボールを投げ、打ち、キャッチする瞬発力と集中力。あれだけの観客を前にしてベストな状態で戦うためには、持久力や忍耐力、判断力などメンタル面でもあらゆるものが必要とされるスポーツであることが直に伝わってきました。
これから先、野球の試合を見るときには、裏側にある選手の方たちの努力を想像しながら観戦することになりそうです。

帰りの機内では『PIANOFORTE』という素晴らしいドキュメンタリー映画との出会いもありました。
題材となっているのはフレデリック・ショパン国際ピアノコンクール。バレエの世界でいうとローザンヌのような登竜門的コンクールで、日本でも話題になることが多いですよね。
撮影が行われたのは日本人の反田恭平さん、小林愛実さんが受賞した第18回。
おふたりにカメラは向けられていませんが、中国やロシアなど多国籍な参加者がどのようにピアノと、そしてショパンと向き合っているのかに迫ったドキュメンタリーになっています。

当たり前のことですがもうショパンはこの世にはいないわけで、どんな風に本質や哲学を見つけていくのかは、本当に人それぞれ。
先生のタイプや教え方によって、アプローチも全然違います。上手に弾くだけではなく、ショパンの世界に入っていくドアを見つけるまでの苦しみや重圧は相当なものだと思うんです。
そもそも芸術とは傾向と対策を練って誰かと競うものなのか、コンクールを機会に聴いてもらう場所が増えるならば、戦うことにも意味があるのではないか……。
そんな葛藤も伝わってきました。

『憧れを超えた侍たち 世界一への記録』を観たときにも同じ感想を抱いたのですが、プレッシャーのかかる環境でずっとカメラを向けられるって本当に大変なこと。
私も『シカゴ』でブロードウェイに挑戦したときにドキュメンタリー番組のカメラが密着していたので、その大変さが理解できます。
このドキュメンタリーに大きく心を動かされたのは、メジャーリーグの試合を観戦した後だったからかもしれません。
誰もがうらやむような場所で活躍している人たち、夢をつかんだ人たちの裏側には、絶対にセンスだけでは語れない人並み以上の覚悟と努力がある。
野球とピアノと全く世界は違いますが、本当の意味での“頑張る”ってこういうことなんだなと感じました。
日本での公開は決まっていないようですが、もしも機内のプログラムにあったらぜひ観てみてくださいね。


写真/米倉涼子
取材・文/細谷美香
構成/片岡千晶(編集部)

 

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