そもそも子供にとってメイクはあり?それとも…?


大塚篤司先生(以下、大塚先生):実は、皮膚科医の中でも賛否両論があって、結論を出すのが難しい問題なんです。その大きな理由は、子供の肌の成熟度にあります。肌が成熟して大人と同じような機能を持つのは、一般的に13歳ぐらいと言われており、13歳未満の肌は未成熟のため、透過性が高い状態。大人の肌なら浸透せず中へと入っていかないような成分も、未熟な子供の肌の場合、浸透して中へ入ってしまうことがあり、肌荒れやアレルギーを起こすリスクが高いのです。また、一度、その成分に対してアレルギー反応を起こしてしまうと、その反応は10年〜20年は続くため、いざ思春期になって本格的にメイクを楽しもうと思ったときに、制限される可能性が高い。そのため、皮膚科学の観点からは、メイクをするなら13歳以上が理想と言え、キッズメイクに慎重になる理由です。
 

 


小学生がメイクをするのはNG?


大塚先生:とはいえ、 SNSなどの影響で、メイクに興味を持つ小学生のお子さんは増えていますし、興味があることなのであれば、挑戦させてあげたいという親心もわかります。なので、皮膚科的な懸念点を知ったうえで、大人が見守りながら一緒に楽しむのであればいいと思います。ただし、子供の肌のことを考えると、肌全体に塗るファンデなどのベースメイクは避けて、アイシャドウ、チーク、リップといったポイントメイクのみに留めるのがオススメ。現時点では、ポイントメイクは子供の肌に触れる範囲が少ないことから、アレルギーや肌荒れは起こりにくいのではと考えられます。

【小学生のメイクあり?なし?】皮膚科医に学ぶ注意点と見守り方。SNSからメイク大流行の今、大人が知っておきたいこととは_img0
 


気をつけるべきは、“成分”


大塚先生:いずれにしろ気をつけなければいけないのが、成分です。スキンケアの話にはなりますが、海外では、“キッズのエイジングケア”が流行っており、それに伴いトラブルが多数報告されています。その結果、カリフォルニア州では13歳未満の子に対してレチノール配合コスメへの販売が禁止されており、欧州でも成分の規制があるところも。レチノールは、大人にとっては美肌、若返りの成分として知られている成分ではありますが、やはり未成熟な子供の肌にとっては刺激が強く、トラブルのリスクが高いというのがその理由。同じようにアルファヒドロキシ酸(グリコール酸、アスコルビン酸〈ビタミンC〉、クエン酸など)も子供の肌には強い刺激があるという報告があるため、避けた方がいいでしょう。

ポイントメイクは、なぜOK?


大塚先生:成分のお話をしましたが、今のところアイシャドウをはじめ、ポイントメイクが子供の肌に触れる範囲が狭く、悪影響を与える可能性が低いメイク方法だと考えられます。ただし、今流行のティント系リップは避けたほうがいいと思います。なぜなら、ティント系は、肌や唇にずっと付着している状態であり、大人の肌なら許容できたとしても、いろいろなものが浸透しやすい子供の肌にとっては負担が大きいからです。

成分を選ぶ以外に気をつけるべきことは?


大塚先生:大人にも言えることですが、肌が荒れているときは、メイクをしないこと。肌に刺激となる成分や物質の侵入を防ぐバリア機能が壊れているため、そういう成分が肌に入ってさらなる炎症を起こしたり、アレルギーを起こしやすい状態です。アトピーがある子にもメイクはすすめられません。また、顔に湿疹やニキビなどがあるからとファンデやコンシーラーなどで隠そうとするのは、毛穴を埋めて悪化させることになるため、避けること。ニキビやトラブルのない部分に限定してポイントメイクを楽しみましょう。
 

流行っているとはいえ、小学生、特に低学年や中学年のうちは、やみくもに全部OK! というのは考えもの。大人が注意しておくポイントをきちんと押さえておくことで、トラブルを起こさず楽しめる確率がぐんと上がりますので、ぜひチェックしてみてください!
 


撮影/柏原力
取材・文/楢﨑裕美
 

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