医療ライターの熊本美加です。

先日、突然に届いた友人の訃報。新卒で入った会社の同期で、当時は昼も夜も、平日も休日も、とにかくずっとつるんでいた。その彼女が、いったいなぜ? 困惑し訪れた葬儀場には、残されたご主人とご両親の姿があり、祭壇には私のよく知っている笑顔の遺影が飾られていた。

「どうぞ、顔を見てやってください」と促されたが、棺の前で足がすくんで動けなくなってしまった。「冗談でしょ」「ねえ、何やってんの??」「意味わかんないよ……」、とブツブツ言いながらためらっていたけれど、意を決し棺を覗き込んだ。そこにはひと回りもふた回りも小さくなった彼女が眠っていた。こんな別れが来るなんて誰が想像しただろうか。友人の亡骸を目にして、堪えても堪えても涙が止まらなかった。

彼女の命を奪ったのは卵巣がん――。

「本人は治す気満々で、みんなに会えるように頑張っていたんだよ。抗がん剤治療をして、2回も開腹手術をしたけど、何もできずそのまま閉じた。播種(はしゅ)と言うんだけど、ほんとに種を撒いたようにがんが拡がってしまうんだ……」、とコロナ禍で在宅緩和ケアを選択し、最後まで看取ったご主人の言葉が忘れられない。

 

コロナ禍で会うこともままならなかったが、彼女は「余計な心配をかけたくない」と闘病を親にも隠していたという。私も知らせてほしかったという思いと共に、もし伝えられたとして、何かできたのか。会いに行って何か言えたのかと、ずっとずっと考えている。

彼女が闘っていた卵巣がんはどんな病気なのか。種を撒くように広がるとはいったいどういうことなのか。それを知りたいと、卵巣がんの第一人者である岡本愛光先生(東京慈恵会医科大学産婦人科教室)に話を伺った。