近年大きな賑わいを見せる同人誌市場。その中でも大注目なのが、技術書の同人誌即売会「技術書典」です。超マニアックな技術について掘り下げた同人誌がずらりと並ぶイベントはオンライン・オフラインと同時開催で、直近の5月26日のイベントでは過去最高の売り上げを記録。
誰でも、自分の好きなことを書き、タイトルからカバーまですべてオリジナルで作る同人誌。出版不況と言われる中、なぜ同人誌が人気を集めるのか? 技術書典参加者の声に加え、商業作家でありながら同人誌デビューをした小説家・朱野帰子さんに、その魅力についてインタビューしました。
「自分だけの経験」も技術の一つ
同人誌のいいところは、自分さえいいと思った内容なら、ひとりの裁量ですべて自由に書けること。そして、それを多くの人に届けられること。え、そんな技術あったの?!というスーパーニッチな内容を読めるのは、商業誌にはない魅力です! 実際どんな内容の同人誌が売られているのでしょうか? 出展者のコメントともに紹介します。
「“潰れなかった”経験が、誰かの役に立つかもしれない」
——会社経営者の豊田昌代さん(サークル名:ZINE Community)
「私たちのサークル『ZINE Community』は、いろいろな地域の人たちで本が作れたら面白いよね、というところから始まりました。もともと、“誰でも1人1冊、書けるネタはある”と思っていて。とはいえ、じゃあ自分は何を書こう? と考えたとき、実はビジネスノウハウ的な本を想定していたんです。でも、似たような本は山ほどあるよね、とメンバー間でボツに。“そういえば、プロジェクトマネージャーになると病みがちというか、ストレスに押し潰される人もいるけれど、私は結構大丈夫だったんだよね”とメンバーに話したら、“それがいいよ! それは知りたい!”ということで『病まないプロマネ術』を書くに至りました。私たちのサークルではこんなふうに、お互いにフィードバックし合いながら本作りをしています」
「技術を明かすことで、共感してくれる仲間を増やしたい」
——GO株式会社 開発本部 AI技術開発部の橘ゆりあさん(サークル名:GO Inc. テックブック部)
「私自身はデータエンジニアで、普段は機械学習まわりの開発やデータ設計の領域を担当しています。この本は社内の有志で作っているものなので、本業とは異なる分野の仕事にチャレンジできることと、アーキテクチャーの面白さを伝えられることに楽しさを感じています。
内容は社内でもチェックを行い、公開が許可された部分のみを掲載していますが、こうした自社の技術を明かすことの意義としては、同じようにアーキテクチャーに興味を持つ人たちや、専門分野の人たちとつながれることです。最終的に、私たちと“一緒にやりたい!”と思ってくれるエンジニアが一人でも増えてくれたらいいなと思って作っています」
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