「昔の私が知りたかったことを、わかりやすく伝えたくて」
——mochikoAsTechさん(サークル名:mochikoAsTech)

心が死んで急に書けなくなった——。小説家・朱野帰子さんが直面した「急な売れ」と、「技術同人誌」を出す理由_img0
『読み手につたわる文章 - テクニカルライティング』では、テクニカルライターのmochikoAsTechさんが、テクニカルライティング技術の中でも普段から特に気をつけているいくつかのコツを紹介!

「普段はIT企業に勤めていて、エンジニアばかりの部署の中で“開発者のための説明書を書く”仕事をしています。APIと呼ばれるものを使うときに、どうやって使ったらいいか、どういう仕様なのかがわかるように、仕様の説明書を書いて提供するという仕事ですね。最新刊では、そうした技術的な説明文を書く“テクニカルライティング”のコツを紹介しています。

心が死んで急に書けなくなった——。小説家・朱野帰子さんが直面した「急な売れ」と、「技術同人誌」を出す理由_img1
新刊だけでなく、既刊本もイベントで販売。mochikoAsTechさんのブースではたくさんの方が足を止めて本を手に取っていました。

以前インフラエンジニアをしていたとき、本を読んでも説明していることがよくわからなかったんです。もっと簡単なところから教えてほしい、と思ったんですよね。今こうして色々わかるようになってきて、“あのときの自分のために書いてあげよう”と思って書き始めました。本を読んだ方からは“優しい先輩に隣で教わってるみたいです”という感想をいただけることが多いのですが、一般的な技術書よりは文体も柔らかい、ちょっとユーモアも交えた口調するようにしています」

 


「名誉」よりも「自由」な同人誌を選ぶ


ちなみに、mochikoAsTechさんは技術書典で販売した本がとても好評で、いろいろな出版社から出版オファーの依頼がきたそうです。ですが、mochikoAsTechさんはこう振り返ります。

「私も商業出版には憧れもあったのですが、“それって何が嬉しいんだっけ?”ということを冷静に考えてみようと思って。いろんな編集者さんにも話を聞いてみたところ、私のケースだと実は商業出版も同人誌もあまり変わらない、というところに行き着いたんです。じゃあ、何が一番違うかといったら“名誉ですね”と編集者さんに言われて。確かに、本屋さんに並んだら嬉しいし、親も喜ぶと思います。でも色々考えた末に、“名誉”なのか、“自分で自由にやりたいのか”でいうと、自由の方がいいなと思って、同人誌という形でずっと出しています」
 

「これいいですね」と言ってくれる人は、きっと現れる


今でも同人誌でのみ執筆活動を続けるmochikoAsTechさんは、「本を出してみたいけれど迷っている」という人に向けて、こんなことも教えてくれました。

「作ってみたいけれど、誰1人見向きもしてくれなかったらどうしよう……という不安があるかもしれません。でも、技術書典のイベントには何万人という人が来場します。100人だったら誰にも刺さらなくても、1万人いたら5〜10人ぐらい“これいいですね”って言ってくれる人が現れる。母数が大きいことによって、誰かにちゃんと届けられるんです。自己満足で終わりじゃなくて“読んでもらえるという喜び”までたどり着けるのは、このイベントの良いところだと思っています」

心が死んで急に書けなくなった——。小説家・朱野帰子さんが直面した「急な売れ」と、「技術同人誌」を出す理由_img2
mochikoAsTechさんのブースの前では見本をパラパラと読んだり、質問をしたり。次から次へとお客さんが。

「1万人いたら5〜10人ぐらい“これいいですね”って言ってくれる人が現れる」——。なんとも勇気が出る言葉です。実際、大勢の人が訪れ、会場の隅から隅までお客さんが通り、見てくれるので、誰かには必ず届くんですよね。いつか本を出してみたい、と思っているみなさん、受け取ってくれる人や共感してくれる仲間はたくさんいますよ……!