生と死の曖昧な世界とノスタルジーと
Shoko:私は「フォークダンス発表会」に出てくる、ちょっとしたくぼみにはまって、そこで何時間もすごすというシーンがあって、なんだか好きでしたね。思い返してみたら、私もよく子どもの頃、階段の途中にある納戸に入って、意味もなく何時間もすごすとかあったなあって。そういう昔の自分の記憶を取り戻すような感覚も、作品を通して体験させてもらえましたね。
はまじ:そんなShokoさんにもやっぱり『猫を抱いて象で泳ぐ』ですね。出てくる少年がまさに“収まっちゃう”の。ぜひ、読んでもらいたい! ごめんなさいね。なんだか、皆さんの感想を聞いていると、ついつい他の小川作品をおすすめしたくなっちゃうの(笑)。
Hiroe:私もShokoさんや『猫を抱いて象で泳ぐ』の少年アリョーヒンと同じく“収まっちゃう”子でした(笑)。下町に住んでいたので、このアーケードの人たちのようなクセの強い人がたくさんいて。でも、本の登場人物たちと同じように、自分なりの世界とのバランスの取り方がある人だったし、アーケードも私の住んでいた下町も、そんな人を受け入れてくれる場所だったです。1度目に読んだときは、そんなノスタルジーを感じながら読みました。
はまじ:2度目はどうでした?
Hiroe:はまじさんと同じく、2度目は生と死の狭間の世界なのかなと感じました。だから、何度でも読めるなと思ったんです。
とこママ:いろんなふうに解釈ができるから、読むたびに受け取るものが違ってきますよね。
はまじ:今って何でも簡単に答えが出るじゃない? スマホで検索すれば、何でもすぐわかるし、なくては困るけれど。でも、そうじゃなくて、行間とか読後感から、登場人物たちは何を伝えたかったのかを、誰かや何かに頼るんじゃなくて、自分でちゃんと見つけなきゃって思わせてくれる小説だなと感じました。簡単には答えがでないし、きっと答えがあるわけでもないじゃない? とこママさんのいう通り、読むたびに変わるかもしれないし。
ayumin:謎解きじゃないから、解きようがないですしね。
Shoko:他にも淡く曖昧なところがあるし、確かに時系列もわからなくなるところもありますよね。
shoko:主人公のお父さんが火事で亡くなった後から始まるんですけど、最後の「フォークダンス発表会」では、お父さんはまだまだ元気なんですよ。もしかしたら、主人公の心がここにはもうないのかなって考えました。
Emi:私は、もしかしたら主人公は自分が亡くなったことに気づいていないのかもって考えました。そんなふうに時系列が前後していたり、解釈もいろいろできるからこそ、ちゃんと整理して理解しようというのは無粋なのかなとも思いました。自分なりの解釈で曖昧なところは曖昧なまま……。
ayumin:無粋だけど、時系列で並べようと思っても、きっと辻褄も合わないんだろうなあ。でも、だからこそ、読むたびに新たな思いが湧くというか。それにしても、小川さんの頭の中ってどうなってるんだろうなって思いますよね。
Shoko:本当に! 人となりをもっと知りたくなりますよね。
COLUMN
〔ミモレ編集室〕読書部メンバーがはまじに薦めたい!
BOOK LIST
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撮影/沼尾翔平
スタイリング/亀甲有希
ヘア&メイク/吉岡美幸
構成・文/幸山梨奈
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