生と死の曖昧な世界とノスタルジーと

小川洋子『最果てアーケード』読むたびに見える世界が変わるからこそ何度も読みたい【はまじ✕〔ミモレ編集室〕読書会】_img0
ジレ¥47300、パンツ¥33000/エッフェ ビームス(ビームス ハウス 丸の内) メガネ¥60500/アイヴァン 7285(アイヴァン 7285 トウキョウ) イヤリング¥13200、リング¥13200/イリス47、バングル¥25300/クイップ クエイント、靴¥14850/ミネトンカ(アースマーケティング)

Shoko:私は「フォークダンス発表会」に出てくる、ちょっとしたくぼみにはまって、そこで何時間もすごすというシーンがあって、なんだか好きでしたね。思い返してみたら、私もよく子どもの頃、階段の途中にある納戸に入って、意味もなく何時間もすごすとかあったなあって。そういう昔の自分の記憶を取り戻すような感覚も、作品を通して体験させてもらえましたね。

はまじ:そんなShokoさんにもやっぱり『猫を抱いて象で泳ぐ』ですね。出てくる少年がまさに“収まっちゃう”の。ぜひ、読んでもらいたい! ごめんなさいね。なんだか、皆さんの感想を聞いていると、ついつい他の小川作品をおすすめしたくなっちゃうの(笑)。

Hiroe:私もShokoさんや『猫を抱いて象で泳ぐ』の少年アリョーヒンと同じく“収まっちゃう”子でした(笑)。下町に住んでいたので、このアーケードの人たちのようなクセの強い人がたくさんいて。でも、本の登場人物たちと同じように、自分なりの世界とのバランスの取り方がある人だったし、アーケードも私の住んでいた下町も、そんな人を受け入れてくれる場所だったです。1度目に読んだときは、そんなノスタルジーを感じながら読みました。

はまじ:2度目はどうでした?

Hiroe:はまじさんと同じく、2度目は生と死の狭間の世界なのかなと感じました。だから、何度でも読めるなと思ったんです。

とこママ:いろんなふうに解釈ができるから、読むたびに受け取るものが違ってきますよね。

はまじ:今って何でも簡単に答えが出るじゃない? スマホで検索すれば、何でもすぐわかるし、なくては困るけれど。でも、そうじゃなくて、行間とか読後感から、登場人物たちは何を伝えたかったのかを、誰かや何かに頼るんじゃなくて、自分でちゃんと見つけなきゃって思わせてくれる小説だなと感じました。簡単には答えがでないし、きっと答えがあるわけでもないじゃない? とこママさんのいう通り、読むたびに変わるかもしれないし。

ayumin:謎解きじゃないから、解きようがないですしね。

Shoko:他にも淡く曖昧なところがあるし、確かに時系列もわからなくなるところもありますよね。

shoko:主人公のお父さんが火事で亡くなった後から始まるんですけど、最後の「フォークダンス発表会」では、お父さんはまだまだ元気なんですよ。もしかしたら、主人公の心がここにはもうないのかなって考えました。

Emi:私は、もしかしたら主人公は自分が亡くなったことに気づいていないのかもって考えました。そんなふうに時系列が前後していたり、解釈もいろいろできるからこそ、ちゃんと整理して理解しようというのは無粋なのかなとも思いました。自分なりの解釈で曖昧なところは曖昧なまま……。

ayumin:無粋だけど、時系列で並べようと思っても、きっと辻褄も合わないんだろうなあ。でも、だからこそ、読むたびに新たな思いが湧くというか。それにしても、小川さんの頭の中ってどうなってるんだろうなって思いますよね。

Shoko:本当に! 人となりをもっと知りたくなりますよね。

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「ミモレに顔を出して登場しても大丈夫!」という〔ミモレ編集室〕読書部メンバーとはまじで記念に1枚。撮影場所は講談社内の図書閲覧室です。
 


 COLUMN 
〔ミモレ編集室〕読書部メンバーがはまじに薦めたい!
BOOK LIST


shokoさんおすすめ『人生フルーツサンド 自分のきげんのつくろいかた』

小川洋子『最果てアーケード』読むたびに見える世界が変わるからこそ何度も読みたい【はまじ✕〔ミモレ編集室〕読書会】_img2
「家族のこととか、子育てのこととか、おしゃれのこととかを作者の視点で描かれていて、読んでいると、じんわりする温かみを感じるエッセイ集です。じっくりじっくり読み進めたくて、まだ読み終わってないくらい(笑)」


Emiさんおすすめ『ミトンとふびん』

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「死を扱った短編集で、冷たかった手先に血が巡ってくるような、体温を感じるような読後感を味わえる一冊です。単行本は、正方形で紙質も柔らかくて飾っておくにも素敵な本です」


ayuminさんおすすめ『永遠のおでかけ』

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「益田ミリさんのお父さんが亡くなる前後を描いたエッセイです。悲しい出来事ではあるんだけど、益田さんの描く世界だと、ちょっとあったかい空気感もあって、ふっと心が軽くなる気がします」


Shokoさんおすすめ『アムンセンとスコット』

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「ミステリーハンターでいろいろな国に行ったことがあるはまじさんも、南極は行ったことないんじゃないかなと思って選んだ一冊です。南極点到達を目指すふたりの人物を描いたノンフィクションで、冒険にも南極にも興味がなくてもするする読み進められて面白いですよ」

 


問い合わせ先
アイヴァン 7285 トウキョウ tel. 03-3409-7285
アースマーケティング tel. 03-5638-9771
ビームス ハウス 丸の内 tel. 03-5220-8686
フーブス tel. 03-6447-1114


撮影/沼尾翔平
スタイリング/亀甲有希
ヘア&メイク/吉岡美幸
構成・文/幸山梨奈
 


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