普段の私ではいけない、そう思う理由


そして、藤井隆さんのテレビの裏側にぐんぐん切り込んでスタジオを飛び出して行く姿や、台本を超越し、絶妙な塩梅で予定調和をそれ以上に変えていく姿、そしてどこまでもまっすぐに歌い踊る姿に私は釘付けで、藤井さんが出演される番組は必ずチェックし、その過去と現在のカルチャーを網羅して繰り出されるユーモアの虜になっていた。

そして、もうひとつ私が夢中になっていたのは「Matthew’s Best Hit TV」であり、藤井隆さんとも親交のあったイギリスでジャーナリストをやられていたマシュー・弦也・南さんが日本のテレビ朝日で始められたTVショウで、モーニング娘。さん、松浦亜弥さん、南野陽子さんなど、レジェンダリーなゲストの方々をお迎えし、トークやゲームコーナー、おばである平野レミさんとのお料理コーナーなど、マシューの全人類を網羅するような親交の深さと広さゆえに実現したような番組を夜ふかししながら蛾のように画面に張りついていた少年Aとは私のことです。

 

マシューが発売するタオルやソーダや書籍を買い求め、シーパラで開催したイベントのテーマ曲「マノン」という名曲をカラオケで何度歌ったことでしょうか。
私がいまバラエティ番組に出演するときに意識しているのは、当時の私が番組が始まる時間までに支度を整えて、宿題を済ませて、ちゃぶ台の前でわくわくしながら楽しみに待っていたテレビの中で全力を尽くして発光し、私を照らしてくれていた方々のことで、先人、先達の皆様が教えてくださったユーモアからアイディアをいただき、テレビを見ている方々が少しでも楽しんでくださるかどうかが指針。その為には普段その辺をうろうろしている坂口涼太郎ではいけないわけで、テレビという夢の箱に見合った身なり、振る舞いをしなくてはいけない。だから、恥ずかしいとか、緊張してるとか、言ってんとちゃうぞ自分。この電波にお前なりのユーモアをのせていけよ自分。何もせんかったら何にも起きへん。テレビっ子としての意地を見せろよ自分。と言い聞かせたことによる「おはようございます。デヴィッド・ボウイです」なのです。

 

そんな私を生放送なのに、NHKなのに受け入れてくださる「あさイチ」で、ついに憧れのあの方に会うことになろうとは、団地の入り口で下校後に真っ暗になるまで友達とたむろして笑っていたお涼が知ったら、ナンダカンダ叫ぶことでしょう。

次週に続く……!


<INFORMATION>
木ノ下歌舞伎『三人吉三廓初買』

「言ってることとやってることちゃうやん」テレビっ子の私を、画面の中で発光し照らしてきた方々のこと【坂口涼太郎エッセイ】_img0
 

木ノ下歌舞伎『三人吉三』9年ぶりの再演! 2014年初演、2015年の再演(芸劇eyes)では読売演劇大賞2015年上半期作品賞部門のベスト5に選出された代表作が、タイトルを『三人吉三廓初買』に改め、新たな顔ぶれで大舞台に登場します。
数奇な運命に翻弄される若者たち――和尚、お坊、お嬢の“三人吉三”と、現行歌舞伎ではカットされている“商人と花魁の恋”がダイナミックに交錯する鮮烈な群像劇。「当今のシェイクスピヤ(我が国のシェイクスピア)」(©坪内逍遥)とも評された歌舞伎作者のレジェンド・河竹黙阿弥による最高傑作の、いまや幻となったオリジナル版の全貌を見られるのはこのキノカブ版のみです。
幕末の動乱期に執筆され、今もなお愛されつづける物語が、同じく変化と激動の現代(いま)を撃つ――これぞ、木ノ下歌舞伎による『三人吉三』の決定版!

【全国ツアー】
★[長野(松本)公演] 
2024年10月5日(土)・6日(日)
まつもと市民芸術館 主ホール
★[三重公演] 
2024年10月13日(日)
三重県文化会館 中ホール
★[兵庫公演] 
2024年10月19日(土)・20日(日)
兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
 


文・スタイリング/坂口涼太郎
撮影/田上浩一
ヘア&メイク/齊藤琴絵
協力/ヒオカ
構成/坂口彩
 

「言ってることとやってることちゃうやん」テレビっ子の私を、画面の中で発光し照らしてきた方々のこと【坂口涼太郎エッセイ】_img1
 

前回記事「「もう神頼みはやめよう」と決めた私が、目標達成のために唯一頼みにしている存在【坂口涼太郎エッセイ】」>>

 
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