『虎に翼』が最終回を迎えました。女性初の弁護士にして裁判官となった寅子(伊藤沙莉)。彼女のまっすぐで、時に迷ったり失敗したり、誰かから鬱陶しがられても、最後まで自分を曲げずに貫き通した生き方は、多くの人に勇気を与えてくれたような気がします。
なぜこんなにも『虎に翼』が心に響くのか。最後は、『虎に翼』がくれたものについて語りたいと思います。
あなたの人生の主権は、あなた自身にある
口にするのもおぞましい蹂躙の数々から逃れるため、父親を殺した美位子(石橋菜津美)と、亡き母の遺した「特別であらなければ」という呪いに縛られた美雪(片岡凜)。これまでたくさんの人生を描いてきた『虎に翼』が、最後に向き合ったのはこの二人の女性の物語でした。
一見すると、まったく別次元のお話ですが、二人を結ぶ共通点は「他者に人生を奪われないで」ということ。それは、『虎に翼』がこれまで届けてきた中でもひときわ力強く切実なメッセージであったように思います。
美位子は、これまで父の手で自分の人生を壊されてきた。逃げようとするたびに道を塞がれ、激しい暴力はやがて思考することさえ彼女から奪った。美位子は、自分の人生を自分で選ぶことができなくなっていました。
美雪も幼い頃にいなくなった母が何を考えていたのかを知るために、母の人生をなぞるように罪を犯した。母と同一化することで、母の命の重しになれなかった無力感をまぎらわせようとしていたようにも見えました。
「もう誰にも奪われるな。お前が全部決めるんだ」
最高裁の判決が出た夜、よね(土居志央梨)は美位子にそう言った。
「お母さんのこと嫌いでも好きでもいい。親に囚われ、縛られ続ける必要はないの。どんなあなたでいたいか、考えて」
審理の場で、寅子は美雪にそう言った。
あなたの人生の主権は、あなた自身にある。思えば、『虎に翼』は繰り返しずっとこのことを伝え続けていた気がします。
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