いま、韓国では日本の昭和&平成歌謡が大人気。今年6月にはNewJeansのハニが東京ドームで歌った松田聖子の『青い珊瑚礁』が話題をさらい、11月には近藤真彦が韓国のテレビで『ギンギラギンにさりげなく』を披露しました。
実はこれらの曲は、特にミドルエイジの韓国人にとって特別な意味があるのです。日本歌謡ブームの理由を探るシリーズ後編では、1990年代の韓国で最大のファンダムを築いたX JAPANの秘話を紹介します。
前編「NewJeansハニの『青い珊瑚礁』、マッチの『ギンギラギンにさりげなく』...地上波TV放送NGでも韓国でJ-POPが愛される特殊事情」>>
サングラス・へそ出しTシャツ・カラーの髪・スキンヘッド放送禁止の韓国で、X JAPANが与えた衝撃の大きさ
1980年代に近藤真彦の『ギンギラギンにさりげなく』がブームとなった韓国で、90年代半ばに大人気となったのは、X JAPANでした。とはいえ、日本の大衆文化開放前の韓国で、テレビに出られるわけでもない。それにもかかわらず、当時韓国留学中だった筆者は、ソウルの大学の地下室で、ビデオを壁に映す文字通りアングラなライブに、溢れるほどの若者が集まっていたのを、鮮明に覚えています。
YOSHIKIは昨年11月、東京ドームで開催された世界最大級のK-POP賞レースの授賞式「2023 MAMA AWARDS」で、TOMORROW X TOGETHERのメンバーTAEHYUNとHUENINGKAIをはじめとするK-POPアーティストと一緒に『ENDLESS RAIN』のステージを披露して話題を呼びました。
「2023 MAMA AWARDS」ではYOSHIKIとTOMORROW X TOGETHERメンバーらが『ENDLESS RAIN』をともに披露
大学生だった当時、X JAPANに熱狂したという放送作家のイ・スンヒさん(50歳)は、こう振り返ります。
「まず、ルックスが衝撃的でした。1998年ごろまで、韓国の放送規制はとても厳しかったんです。サングラス禁止、へそ出しTシャツ禁止、カラーの髪は禁止、スキンヘッド禁止。そんな中、トサカ頭で男性がメイクをしていたX JAPANは衝撃的だった。黒いアイメイクが怖いのに、歌うのは美しいバラード。ギャップに惹かれました」
爆発的な人気を支えたのは、当時黎明期を迎えていた、オンラインでの「推し活」でした。
「90年代にはいると、パソコン通信が普及しました。釜山から個人輸入されたCDが広まり、ファン同士がPC通信で語り合うコミュニティーができたのです。僕もそういうふうに聴いていました。ソウルの地下商店街や明洞で、『X JAPAN売ってます』と掲げる店もありました」(K-POP人気指標集計サイト「K-POP RADER」を運営するSpace Oddity代表のキム・ホンギさん(48歳))
「東亜日報」(2016年3月28日付)によると、「日本の文化開放以前に売れたX JAPANの海賊版は100万枚以上」ともいわれています。
金大中政権の「日本大衆文化開放」によって、韓国では1999年に日本の大衆歌謡の公演(2000席以下、2024年現在は人数規制なし)が認められました。しかし、その2年前にX JAPANは解散し、韓国での初ライブが叶ったのは、再結成後の2011年のことでした。
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