娘の「お母さんは分かってくれない」が生まれる原因
 

根本 M子さんがそう思うのはわかるんですが、実はそこには「バランス」というのがあってですね。これは子どもの側が後天的に学ぶものなんですけど、ようは、お母さんはすごく感情的な人なんです。で、感情的なお母さんに、子どもは感情では敵わない。

M子 なるほど。

根本 そうなると、子どもは論理や理屈でいくんです。これはみんながみんなそうってことではないんだけれども、母親が感情的でヒステリックだと、だいたい長女はクールで論理的な性格になります。ヒステリックな母親に対して、論理で対抗しようするんですね。ただ、これだとバランスは取れるんだけども、会話はまったく噛み合いません。子どもに理屈で対抗されたら、感情的な母親は「小難しいことばっかり言って。あんたはほんと理屈っぽいんだから」となってしまうので。

M子 ウッ……。今の言い方、ウチのケンカを見ていたんですかってくらい母と同じです。あーー、ちょっとこれキツいですね。自分や母のことを自分から話すのは何ともなかったけど、母に言われたのと同じ言葉を同じ口調で言われると、しまい込んでいたものが一気に引きずり出される感覚があります。まだ心臓がドキドキしてる。

根本 ゆっくりいきましょう。……そう、こうやってバランスを取っていくと、母親は「あんたのことはよう分からん」となりますし、娘は「なんでお母さんは分かってくれないの」となる。でもこれは分かろうとする意思があるかどうかではなくて、そもそも言語が違っちゃってるってことなんです。

“男は論理的、女は感情的”という話はどこから来たのか?「お母さんは何も分かってくれない」娘の苦しみの根源は【しんどい母の手放し方・第8回】_img0
 

M子 言語が違う、その通りですね。昔から母は、「M子はいつもお母さんのこと悪く言う」「すぐ私を悪者にするんだから」というのが決まり文句なんです。私は私で、それを聞くともう全部バカバカしくなっちゃって、それでいつも実家に顔出してもすぐ帰ってきちゃうんですよ。なんでこうも人の話を聞こうとしないのか、と。

根本 まあでも、それがまさしく“女子”なんですよね。たとえば井戸端会議が成立するのも、ガールズトークを5時間、6時間と続けられるのも、相手の話を聞いてないから。


M子 あはははは! あーでも、それはめちゃくちゃ分かります(笑)。

根本 相手の話をちゃんと聞いていたら、何時間もお茶できないの。お互いに自分の喋りたいことをラリーで投げ合って、適当に相槌打ったり都合のいいところだけ聞き返すだけ、だからできるんです。逆にそういう場で正論で返したり、話の矛盾を指摘すると一気に空気が冷めるでしょう。よくいう「理屈っぽい男はウザい」っていうのと同じですけど、それを娘にやられたらね。

M子 まあ、ムカつくでしょうね。

根本 娘はだいたい4歳くらいから、母親の痛いところを直撃することを言うようになります。そしてまた興味深いことに、このバランスは世代間に引き継がれていくんですね。母親がヒステリックだと娘はクールになるでしょ、すると娘の娘はヒステリックになる。

M子 うわっ、嫌ですねそれ……。

根本 母親が感情的になればなるほど、ほかの家族はクールで論理的になるし、さらに父親のポジション、威圧的なのか影が薄いのかによって息子や娘の関わり方も変わってくる。家族というのはそうやって、家の中のバランスを取っていくんです。


<つづく>
 

 

イラスト/Shutterstock
構成/山崎恵
 

 


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