オードリー・ヘプバーンとグレタ・ガルボ
2つの引退、ある1つの共通点


ふと、ハリウッド史に残る“2つの引退“を思い出しました。20世紀に一世を風靡した2人の大女優が、30代後半という絶頂期において、突然のように休業、または引退を発表。世間を驚かせているのです。

1人はオードリー・ヘプバーン。子供たちと過ごしたいという理由で、ハリウッドの喧騒を離れ、スイスの郊外に家を購入、若くして隠遁生活のような状態に入っています。

女優としての野心や名声よりも、家族と静かに生きることを選ぶという価値観、生き馬の目を抜く当時のハリウッドでは、理解されにくかったのかもしれないけれど、オードリーは事実こういう言葉を残しているのです。
「子どもより大切な存在なんて、あるかしら?」そして「何としても避けたかったのは、人生を振り返ったとき、映画しかないという事態です」

もう1人は、きっと名前だけは知っているはずの伝説の女優グレタ・ガルボ。神秘的な美貌と個性的な演技で、サイレント時代から圧倒的な人気を誇った人ですが、「もうこんな仕事はたくさん」という言葉を残して、36歳で突然の引退。一説に最後の映画となった『奥様は顔二つ』が大失敗に終わり、さんざんな酷評を受けたことが原因だったとも言われます。

 

2つの引退は、一見全く意味の違うものなのに、やはりどこかに共通したものを感じます。 そして、今回のキャメロン・ディアスのケースも……。時代も違うし、年齢も微妙に違う、でも人にはこういう時期が必ず訪れるということを、今の私たちは理解できるのです。

20代から30代、キャリアを積むほどにどんどん自信もついてきて、実績も得られ、堂々と前に進んでいく感覚がある一方、30代後半から40代後半にかけて、急に自信を失い、そこから逃げ出したくなるような一時期が訪れる……。
きっかけはそれぞれ異なり、 家族の事だったり、仕事の挫折だったり、人生に対する疑問や惑いだったり。でもそこには1つだけ共通したネガティブ要素があります。
それは残念ながら、”衰え“というどうにもならない宿命。
ここまで見てきた3人の女優の引退に、やっぱりそれが見てとれるのです。

仕事や人生への自信を、見た目の衰えによって、失う時期


もちろん、衰えを引退の理由にする人はいないはず。80代90代ならいざ知らず、30代40代の衰えなどタカがしれているから。
でも逆に、一生レベルでいえば些細な衰えでも、女は初めて形ある衰えに見舞われた時に、一時的にでも一気にエネルギーを低下させ、いろいろなことが辛くなる、そういうものだと思うのです。
だから本人も気づいていないかもしれないけれど、明らかに始まっている容色の衰えで、仕事や人生に対する自信も失い、ちょっとした自暴自棄となって、その場を立ち去りたい衝動に駆られるのではないでしょうか。


女優引退後は、オーガニックワインのブランド「Avaline」のプロデュースなども。

子供と一緒に過ごしたいからと明快な理由を掲げていたオードリー・ヘプバーンさえ、一方で 「成功すればするほど、自信は揺らぐものだと思うことがある」と語ったほど。確かにそれは、演技者としての自信について語っているのでしょうが、その自信を知らず知らず支えていた姿形の美しさに翳りが見えてきたことも、大きな不安につながっていったのではないかと思うのです。

昔の女性は、それこそ年齢という数字そのものにも負けてしまっていたはずです。そして今のようにネットによる雑音は聞こえなくても、ゴシップ誌などが書き立てるバッシングの非情さは、今と変わらなかったはず。
グレタ・ガルボへの酷評の中には、年齢や加齢に対する心ない中傷が多少とも含まれていたに違いないし、オードリー・ヘプバーンはそうなる前に謙虚に舞台から引き下がったという 見方もできるのです。