先月、講談社にて侍ジャパン前監督・栗山英樹さんの著書『信じ切る力 生き方で運をコントロールする50の心がけ』出版記念講演会が開催されました。今回は、その冒頭に行われた老舗書店の有隣堂・松信健太郎社長との特別対談の後編をお届け。栗山さんの本の選び方や、選手へのユニークな本の贈り方をご紹介します。

特別対談の前編
「本がなかったら僕は壊れていたかもしれない」栗山英樹の人生を救った本と書店への思い>>

「監督、いい本ないですか?」選手にも聞かれる球界きっての読書家・栗山英樹流「モチベを上げる本の贈り方」_img0
 


本屋さんでは「どっさり大人買い」が基本


松信健太郎さん(以下、松信):本屋さんに今、自由に行くことはできますか。何を買うか、ジロジロ見られて、大変じゃないですか?

栗山英樹さん(以下、栗山):本屋さんに行っても、誰も僕のことなんて見てくれないですよ(笑)。ただ今回、自分の新刊が本屋さんにたくさん置いてあって、講談社さんに悪いなと思って、自分で何冊かレジに持って行ったんですが、そのときはマスクして「これください」とやりました(笑)。


松信:本屋さんでの本の選び方、過ごし方でこだわっていることはありますか?

栗山:僕は本に関しては、ネットサーフィンならぬ、本サーフィンするんです。読んでいる本の中で、別の本が出てきたりしますよね。そんなふうに出てきた本を必ず買うんです。それで本屋さんに行ったら、まわりの本をかなりチェックします。
昔の偉人たちが、「本は一冊ずつ買え」「よく読む本から買え」といった言葉を残していますが、僕はどっさりまとめて買ってきちゃうタイプです。
本だけは父親に何でも許してもらったので、思い切って買っていいんだという気持ちが強いみたいです。だから、大人買いをしています。
 

 


栗山流・本の贈り方は「メッセージ入り」


松信:選手たちには、どんな本を贈っておられるんですか?

栗山:渋沢栄一の『論語と算盤』を贈ったり、読みやすい自己啓発本を贈ったりします。
特に新入団の選手には、入団が決まったら本を贈って、父親、母親、学校の先生、監督さんにメッセージを書いてもらいなさい、と伝えています。
本って、前後に空いているページがあるじゃないですか。そこに、「あなたはどういう人になってほしいか」を書いてもらいなさい、と。加えて、自分がどうなりたいのかも書く。最後に僕も選手に対するメッセージを書きます。
よく書くのは吉田松陰の言葉ですね。
「自分との約束を破るやつほど、くだらないやつはいない」
自分で決めたことはやってくれ、ということです。
どうして、こんなことを選手にやってもらおうとするのかというと、ただ紙に書いても、なくなってしまうことが多いからです。本に書いておくと、本棚に置いておきますから、なくならないでしょう。

「監督、いい本ないですか?」選手にも聞かれる球界きっての読書家・栗山英樹流「モチベを上げる本の贈り方」_img1
対談を行った栗山英樹さん(左)と老舗書店の有隣堂・松信健太郎社長(右)

選手は入団したとき、夢を持っています。でも、それがすんなり叶うわけではない。なかなかうまくいかなかったとき、本を開いてパッと手に取ってみてほしいんです。
「ああ、あのとき、こう思っていたんだな」とか「親父やお袋はこんなふうに俺のこと思っていてくれたんだな」とか思い出すと、モチベーションが上がるんです。
本というのは、手に取ったら勉強になるだけじゃなくて、こんなふうにとても大事なものにもなるんですよね。

ところで、そういう大事な本をどうやって売っているんですか。いろいろ工夫をしておられるんじゃないかと思って。

松信:ありがとうございます。多くの書店が本当に努力して本の良さを伝え、読書の素晴らしさというものを伝え、日々頑張っていると思います。
今日は前の方の席に書店の経営者がたくさんいますが、今、本屋が少なくなってきていて由々しき事態だと思っています。

なかなか厳しいのが現実ですが、僕らがやろうとしているのは、それでも本の良さを伝えていくことです。愚直なまでに伝えていく、POPだとか、SNSなどでも伝えていく。
それともう一つは、いろんな意見がありますが、本屋を面白い場所に、みんなに集まってもらう場所にしようということです。これからも、努力してまいります。

栗山:きっと、いろんな組み合わせを考えたりされているのだと感じていました。今は、カフェの中に本屋があったりしますよね。そうすると僕らも行きやすくなるし、本を手に取りやすい。いろいろな努力、素晴らしいと思います。

松信:ありがとうございます。みんな頑張っているので、すごく励みになると思います。

 
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